タイの電車、優先席のシールには老人・子供・妊婦・身体の不自由な方ともう一つ何が描かれている?

タイのBTS

BTSは日本の電車よりも車両自体が小さく、連結車両数が少ない

新型コロナ禍でもあまり減らぬ訪タイ邦人

 タイは日本人リピーターが多い。さすがに現在は、タイも新型コロナウィルスの影響で観光客が激減している真っ最中。今年1月には100万人超の訪タイ者があった中国人は翌2月には17万人レベルと、85%近くも入国者数が激減した。しかし、それでも日本人は1月は16万人レベルで、2月はわずか2万人減の14万人台に留まっている(タイ入管発表資料参照)。  日本人がタイを好む理由は様々あるが、食べものがおいしいこと、観光スポットが多いこと、常夏でいつ来ても気温が高いこと、そしてタイ人の気質がいいことが挙げられるだろう。悪く言えば適当ではあるが、おおらかなところや親切で優しい人が多いので、タイ人が好きでタイに再びやってくる人もいる。  実際、タイは微笑みの国とも言われ、見ず知らずの人でも目と目が合えば優しく微笑み合う。ベトナムやカンボジアは環境的には似たような国だが、この国々にはそういった習慣がないので、知らない人に微笑むことは滅多にない。ただ、タイ人の微笑みは人間関係が複雑でシビアなタイ社会における処世術のひとつで、微笑み自体に相手を思いやる気持ちはほとんど含まれていない。

「電車で席を譲る」のが当たり前になっているタイ

優先席ステッカーが貼られている

ドアの横の席は大体優先席ステッカーが貼られている

 しかし、現実的に、タイ人に優しく、親切な人が多いのは事実だ。それをよく目にするのが電車の車内である。  首都バンコクの中心地をBTSあるいはスカイトレインと呼ばれる高架電車、そしてMRTもしくはバンコク・メトロと呼ばれる地下鉄が走っている。BTSは1999年12月に、MRTは2004年7月に開通。両社とも開通当時は敷設距離が短く、また料金も割高に感じられたため乗客が増えず、赤字運行が続いた。しかし、現在に至るまで延伸工事が着々と進み、物価が上がってきたことで運賃があまり高いものではなくなってきたことから、日本のように朝夕はラッシュになるほど混雑してきた。日中もそれなりに乗降客数がある。  そういった車内では常にタイ人が席を譲り合っている姿が見られる。日本の場合、優先席以外では席を譲ることはないし、ひどい場合では優先席に座ったままその席を必要とする人を無視する健常者も見受けられる。また、日本では子どもはあえて立たせるという考えを持つ人も少なくない。  タイでは混雑した電車に小さな子ども、お年寄りが入ってくると、ドア近辺の人がすぐさま立って席を譲ることが当たり前だ。近年はスマートフォンに目を落としていて気がつかない人もいるが、それでも誰かが必ず立ち上がるし、場合によっては立っている人が席を譲るように促す。そして、それを無視することなく、さっと誰かが立つ。  タイの電車に大きく優先席とステッカーが貼られるようになったのは2019年からだ。それ以前から小さくステッカーはあったが、そんなものが必要ないほど譲り合いが定着していた。この日本との譲り合いの精神の違いは一体どこから来るのだろうか。
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優先席シールに描かれるタイならではのサイン
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