新型コロナウィルス、日本のカルト団体や偽科学団体、それに類する団体はどう動いているか?

新型コロナ対策イメージ

masa / PIXTA(ピクスタ)

 新型コロナウイルスの流行で多くの日本人が疑心暗鬼や心理的なパニックに陥っている中、日頃「カルト」「ニセ科学」などで話題になる団体やはどのような動きをしているのか。大まかではあるが確認できたものについて列挙してみたい。

カルト宗教もイベント中止続々

新天地イエス教会の教祖・李萬熙(イ・マンヒ)氏

新天地イエス教会の教祖・李萬熙(イ・マンヒ)氏=2014年、筆者撮影

 韓国では、大邱(テグ)市の「新天地イエス教会」で起きた集団感染が、同国での感染拡大に大きく影響した。同国の感染者の8割が「新天地」と接点を持った人だとか、感染者の半数が信者だとも報じられている。  もともとカルト的な団体だと指摘されてきた同団体だが、実際には韓国のキリスト教界から異端視されているという教義上の批判が強かった。日本において社会問題としての「カルト」の定義に触れるような人権侵害の要素については詳細がわからない。  ところが2月25日に週刊文春デジタルは、新天地の信者たちが感染発覚後にSNSで「既存の一般教会の礼拝に潜入して新型コロナを拡散させ、伝染が新天地だけの問題ではないことを知らせよう」と語り合っていたと報じている。事実であれば、事実上のテロ行為に近い。こうなってくると、もはや教義の正否の問題ではなく「カルト」と呼んでよさそうだ。  新天地は日本でも活動している。2014年に私が鈴木エイト氏とともに教祖・李萬熙(イ・マンヒ)氏にインタビューした際、関係者は日本の信者数を「100人ぐらい」と語っていた。現在、当時の広報担当者に電話をしても出ないため、現状については確認できなかった。  一方、日本で「カルト」あるいは「カルト的」と指摘されることがある宗教団体には、イベント中止の動きが広まっている。  確認できているのはウェブサイトなどで一般に告知している団体が中心で、いずれも集会等を完全に中止したかどうかまでは確認できないが、たとえば「統一教会」(現正式名称「世界平和統一家庭連合」)では、本部がある韓国での「修錬会」を3月末まで中止に。日本国内での「天寶集会」と呼ばれる集会も中止を発表している。  「摂理」(現在はキリスト教福音宣教会)は、2月29日に予定していた清瀬けやきホールでの演劇公演「愛と平和だ」を中止した。摂理は、教祖・鄭明析が強姦罪で逮捕され服役(すでに出所)。日本でも、正体を隠した偽装サークルを用いて大学生などを勧誘していたことが問題視されて2006年に大々的に報道された団体だ。近年も同様の活動を続けている。  創価学会も、総本部関連施設を閉鎖した。「広宣流布大誓堂」における勤行会を3月31日まで中止とした。創価学会同様に日蓮正宗から派生し、かつての創価学会のような強引な折伏(勧誘活動)を今も行なっていることで知られる「顕正会」も、日曜勤行などの中止を信者に伝えている。  ただ、顕正会が中止を決定したのは大規模イベントのみで、会館(支部にあたる)ごとに行われる日常的な勤行のための集会は継続。また「いよいよ一対一の折伏を強め、広宣流布を進めようではありませんか」と、個別の信者による勧誘活動をむしろ積極的に行なうよう呼びかけている。
日曜勤行などの中止を指示する顕正会の「本部通達」

日曜勤行などの中止を指示する顕正会の「本部通達」

 大学内や街頭での正体を隠した勧誘活動で知られる「ヨハン早稲田キリスト教会」も、3月1日と8日の日曜礼拝を、インターネット中継を流しながら各家庭で行なうように信者に通知した。  「ものみの塔聖書冊子教会(エホバの証人)」については、Twitter上で「3月の大会が中止になった」「地元の支部での集会は行われている」といった類の情報が流れていた。教団に電話で確認すると、以下のような回答だった。 〈日本各地で開催が計画されていた大規模なイベント(大会)は、現在の行政の指導に従い、2020年3月15日まで中止を決定しています。その後のイベントの開催については、その時点での行政の指導や新型コロナウイルスの感染状況を考慮し、判断していくことにしています。各地域で開催されている小規模なイベント(集会)については、地域によって状況が異なりますので、種々の要素を考慮した上で中止するか、マスクの着用、徹底した手洗いや消毒といった対策を施した上で開催しているところもあります。いずれの場合も、感染のリスクを最大限に減らすために行政の指導に従って予防的な対応を取りつつ、適宜、イベントを開催するかどうかの判断をしていると思われます。〉  ある程度の規模を持つ宗教団体は、一般的に「カルト」として名指しされない伝統宗教や新宗教の教団も含めて、次々と礼拝や集会、研修会などの中止を発表している。

幸福の科学はウイルス撃退祈願でイベント連発

 これらと真逆の方向で「独走中」なのが、幸福の科学だ。  1月末から、「中国発・新型コロナウイルス感染撃退祈願」(奉納目安1万円以上)を開始。教団が信者宛に送信した案内メールによると、「感染を防ぎ、中国の反省を促す祈願」だという。  教団の宣伝用画像には、「信じる心で免疫力を高め、新型コロナウイルスに打ち克つ!」などという文字が踊り、祈願経文には「エル・カンターレよ、その御名のもと、信ずるものを救いたまえ」などという文言もある。エル・カンターレとは、幸福の科学における地球至高神であり、教祖・大川隆法総裁を指す。つまり、教祖を信じる者だけ救って下さい、という祈願だ。
「中国発・新型コロナウイルス感染撃退祈願」の宣伝画像

「中国発・新型コロナウイルス感染撃退祈願」の宣伝画像

 2月18日には『中国発・新型コロナウイルス感染霊査』(大川隆法著)なる霊言を出版した。〈イエス・キリストの宇宙の魂(アモール)の一部〉〈宇宙防衛軍の司令官の一人〉(同書より)などとされる複数の宇宙人の霊を呼び出したと称して、中国がチベット、ウイグル、香港などへの攻撃を強めようとしたために、中国が開発していた生物兵器が「憎しみの波動」によって「悪霊化」した結果が新型コロナウイルスのであると説明した。この「共産党ウイルス」に対して、神への信仰があれば「信仰免疫」が身につくのだという。  宇宙人の霊と称しているが、実際には、大川隆法総裁の口が語っている内容だ。言うまでもなく、霊言も宇宙人も「憎しみの波動」も「悪霊化」も、全て幸福の科学による宗教的メッセージであり、科学的根拠はない。新型コロナウイルスを「生物兵器」とする説も、統一教会系メディア「ワシントン・タイムズ」紙が報じたものの、一般的には否定されている。 「まあ、日本に罰(ばち)が当たるとしたら、エル・カンターレをなめすぎていると思います。私たちは、これ以上はもう許せない。限界です」(宇宙人の霊)  大川総裁を信仰する者が少ないから日本でもウイルスを広めると言わんばかりだ。前述の通り、幸福の科学のウイルス対策祈願は信者のみを救うことを願うもの。信者が家族や知人を救いたいなら、勧誘活動に力を入れ入信させるしかない。  その大川総裁は、2月22日に香川県内で講演。機関誌『ザ・リバティ』のウェブサイトによると、こう語っている。 〈冒頭、大川総裁は〈(マスクは)実際全然要りません。(中略)コロナウイルスを死滅させることも可能です。そういう法力を持っております。だから全然気にしないで、治しに来たと思った方がむしろいいかもしれません」と語った。〉(ザ・リバティWeb「コロナを死滅させることも可能」 大川総裁が香川で講演会「法力を身につけるには」より)  2月下旬の休日に都内最大の幸福の科学施設である「東京正心館」を訪れた信者は、私の取材に対してこう語る。 「館内で50~60人くらいの信者を見ましたが、マスクつけていたのは5人ほどでした。施設内でマスクをつけていると目立つし、信仰で感染を防げるという大川総裁の教えを信じていないと表明するようなもの。私もマスクをつけるのがはばかられました」  SNSではすでに、発熱した幸福の科学信者が病院で医師から「新型コロナウイルスではない」と診断されたといった報告をしているケースもある。医師に前述の『中国発・新型コロナウイルス感染霊査』を見せ、信仰免疫について説明してきたという。  マスクなしの大規模集会や祈願イベントなどで信者を集め、勧誘活動に奔走しなければ家族や知人を救えないかのような「設定」で煽る。一歩間違えば、日本版「新天地」になりかねない。
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ホメオパシーやマクロビオティックは?
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