「俺のメシは?」食事がないと不機嫌になるモラ夫の自動思考<モラ夫バスターな日々44>

まんが/榎本まみ

弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<44>

 「俺の飯は?」  夕食の用意がないことがわかると、30代の夫は、まず訊いた。その日、30代の妻は熱があり、寝ていた。  妻は、「ごめんなさい、身体がだるくて……風邪かしら」と謝った。夫は妻の顔を黙って凝視した後、何も言わずに外食に出て行ってしまったという。  夫はその後1週間、口もきかなかった。

「手伝ってやってるのにそんなに言うなら、俺はやらない」

 妻によると夫は、家事や育児も手伝う良い夫だという。それなのに、お腹を空かせて帰宅した夫の夕食を用意していなかった自分が悪いと言い張った。  「いや、妻が寝ていたら、まず具合を心配するのが健全な対応だと思いますよ」と私が言っても、妻は納得しない。  普段の様子を聞くと、お風呂洗いと子どもの入浴は、夫の仕事だという。週末は、皿洗いを手伝ってくれることもあるそうだ。ちなみにモラ夫の家事「手伝い」はなぜか、風呂洗い、入浴、皿洗いが多い。  例に漏れず、この夫の洗い方もやや粗雑で、汚れが落ちていないことがしばしば。一度、妻が「汚れが落ちていなかったよ」と指摘したことがある。  夫は「なんだよ、手伝ってやってるのに、そんなに言うなら、俺はやらない」とふてくされた。

未就学の時点ですでにモラ文化が刷り込まれる

 人間は、弱い存在である。法規範や社会規範に従って、人も殺すし、拷問もする。善良かつ意思の強い市民であっても、規範に逆らうことは容易ではない。  多くの被害妻は、妻に対する冷酷さや理不尽さから、夫の人格障害等を疑う。その気持ちはわかるが、ほとんどの場合夫に障害はなく、正常である。  モラ夫になる原因は、社会化の過程で、人格の基礎に内在化されたモラ文化(男尊女卑、性別役割分担などの社会的、文化的規範)にある。未就学の頃に、モラ文化を内在化させるので、仮にその後、学校教育で男女平等を学んでも、基礎にあるモラ文化は揺るがない。
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モラ夫の“自動思考”とは
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