大都市が偉い、大企業が偉い、そんな社会に終わりを告げる「電気の地産地消」時代がやってくる!

ソーラーシェアリングが地域を“絶望”から“希望”に変えた

大豆

パネルの下に届く太陽で大豆がたわわと実る

「ソーラーシェアリング」をご存知だろうか。字面から「太陽の光を分け合う」と解釈できるかもしれないが、意味はわからないだろう。太陽の光を「作物を育てること」と「電気を作ること」で分け合う、ということだ。  俺の活動拠点となる千葉県匝瑳市の「開畑(かいはた)」というエリアは、ソーラーシェアリングのパイオニアの地として有名になった。開設から5年足らずにも関わらず、国内だけでなく、海外からの視察も絶えない。 「開畑」は地名の通り、かつて山を切り崩して広い畑にした丘陵地。穏やかな緑と茶の丘陵線からなり、そこから立ち上がる白い雲と青く広い空を見ていると、おのずと清々しい気分になる。けれどこの景観にも徐々に衰退の波が襲っていた。  他の日本中の地域と同じで農家の高齢化が進み、山を削ったゆえの痩せた土で作物はうまく育たない。耕作放棄地が広がり、そこに不法投棄が増える……という悪循環が進んでいたのだ。そこにソーラーシェアリングが登場して“絶望”から“希望”に変わった。

農業と発電が両立、収量が上がることも

太陽光パネル

太陽光パネルは1/3。隙間は2/3あり、土に太陽が届き作物を育てる

 ソーラーシェアリングをもう少し説明しよう。畑の上のトラクターが通れるほどの高いところに、細長い太陽光パネルが隙間を開けて並ぶ。1/3がパネルで、2/3が隙間という間隔だ。発電効率や売電収入を優先するなら、もっと隙間を小さくしてパネルで埋め尽くせいばいい。  しかし、ソーラーシェアリングの目的はそこではなく、農村地域や農業の維持再生だ。パネル間の広い隙間から充分な太陽光が土まで届くので、農業と発電の両立が可能になるわけだ。  よく心配して質問されることとして「パネルの下で作物が育つのか?」というものがある。どんな作物でもほぼ栽培は可能であり、収量に遜色なく、むしろ収量が上がるものもある。  そもそも、自然界では樹々や森や山などで日陰と日向は変化する。それが本来の自然の姿であり、そうした中で植物は進化を遂げてきた。ほどよい日陰があることこそ自然で、日陰がないほうが不自然なわけだ。  ここ、開畑エリアのソーラーシェアリングのパネルの下では、痩せて水はけが悪い農地でも育つ大豆を春から秋に栽培し、冬から梅雨には麦類を栽培する。無農薬で育て、除草剤を使わないので、農地や地域を汚染することもない。収穫した大豆や麦はオーガニックな食材として市場価格より高めに売れる。
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売電収入の利益を地域の課題解決につなげる
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