田代まさし再逮捕報道の異常さ。メディアこそ「ゴシップ依存」離脱を

ゴシップ依存のワイドショー

Vidmir Raic via Pixabay

 覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで田代まさし容疑者が宮城県警に逮捕された。5度目となる逮捕にネット上では「またか」「裏切られた気持ち」といったコメントが上がっているが、それだけではなくワイドショーなどのメディアも、大臣が早々に2人も辞任し、利権まみれの大学入試共通テスト問題など、社会に大きな影響がある現政権のことをそっちのけで延々とこのニュースを取り上げている。

厳罰化を訴えるコメンテーターまで……

 しかし、5回目の逮捕とは言え、その報道は極めて異常だ。そもそも、現段階ではあくまで容疑にしかすぎない。中立の立場にあるべきメディアが、容疑が確定する前から断罪し、専門家でもないコメンテーターが“感想”を述べるのは極めて不自然だ。  例えば、TBSの情報番組「グッとラック!」では、落語家の立川志らく氏が「社会からの支援が必要なんだけど、最初から治るまである程度、刑務所に入れとくとか、ちょっと罪を重くするってことはできないんですかね。結構早く出てくるでしょ。出て来てまた捕まる。捕まるたびに一方ではとんでもない犯罪者だ、一方では病気だって議論になるわけですよね」と、厳罰化を訴えている。  ワイドショーのコメンテーターについてはこれまでも疑問視する声は少なくなかったが、薬物治療の専門家ではない素人が公共の場で依存症を語るのは極めて危険なことだ。

お馴染みの自粛も

 こういった報道だけでなく、もはやお馴染みとなった放送・公開の自粛も行われている。今年7月に田代氏が出演したNHKの「バリバラ」の動画は公式サイトやYoutube上で公開されていたが、逮捕を受けて非公開にされてしまった。  企業イメージを大切にするスポンサーのついた番組ならともかく、NHKは公共放送だ。さらに田代氏が出演する番組は薬物依存の実態について語ったもので、薬物の危険性や適切な治療の必要性について語ったものだった。  一方では容疑の段階でバッシングを行い、もう一方では“なかったことにする”という報道の仕方には、薬物依存への対策という観点からも、報道のあり方という観点からも疑問を抱かずにはいられない。
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