日本映画不毛の地だったロシアの映画祭で8本の日本映画上映、急速に進む日露の文化交流

映画界では中露の協力が進む

中国映画界の人々

中国映画界の人々とも交流。左から『陵水謡』主演の宋禹さん 、現地スタッフのナターリアさん 江流監督、筆者、中国側の関係者

 25本の短編映画は、「アムールの秋映画祭」で上映後、中国の大連市で行われる短編映画祭で上映されることが決まっています。ロシア人俳優と中国人女優が演じたラブストーリーを露中2か国の監督・プロデューサーが制作した、『陵水謡』(アンドレイ・ミスキン監督・江流監督合同作品)の招待上映もあり、ロシアと中国の映画界の深いつながりを感じました。  ブラゴベシチェンスク市から650メートル先の、アムール川中央部分が中国との国境にあたります。2020年4月には中露で半額ずつ負担して作られた橋が架かります。  中国政府が進める、ヨーロッパやアフリカまでネットワークを広げる「一帯一路」政策においても、ブラゴベシチェンスク市の重要さは増してくるものと思われます。  モスクワ映画祭などに比べるとローカルなイメージのある「アムールの秋映画祭」ですが、ロシアマーケットと中国マーケット双方にアピールできる可能性も出てくるかもしれません。

ロシアの映画業界は右肩上がり

上映シアター

上映シアターの前で。プログラムディレクターと日本から来た映画人たち

 ロシアでは近年、国産映画の質・量の向上に国を挙げて取り組んでいます。ロシアでは年間600本の映画が興行されますが、そのうちの4分の1が国産映画です。  ロシア映画のトップ25本の興行収益は、2017年合計で250億円。日本の邦画市場の約4分の1の規模です。1本あたりの興行収益は日本よりまだ少ないものの、その収益は右肩上がり。  ロシア文化省が費用を出したロシア映画の数は2013年には59本でしたが、2016年には136本。たった3年で倍以上に増えています。「芸術性を大切にしつつ、前のめりでいろんなことをやってしまおう!」という勢いがロシアの映画界にはあります。  CG技術の向上によって、ハリウッドさながらのアクション映画も増えています。2018年にロシア映画史上最高興行実績を上げた、ド迫力の戦闘アクション映画『T-34』(アレクセイ・シドロフ監督)は40億円の空前の大ヒット。  第二次世界大戦中のソ連捕虜兵がソ連の戦車でナチスドイツの収容所から奇跡の脱出劇を繰り広げる作品です。10月25日からは日本でも公開予定。異次元ともいえるド迫力な音や映像の演出が印象的。劇場で見ることをお勧めします!  ロシア映画は、南米や中国ヨーロッパなどでも配給されていて、ロシア政府がその後押しをしています。ロシアではハリウッド映画がよく上映され、フランスや北欧の映画も上映されていますが、日本映画はほとんど上映されていません。
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来年以降も日本映画を上映
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