「トップダウン」なだけのリーダーはチームを育てられない

 筆者はトップダウンではない、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップ実践手法を演習している。そこで、よく受ける質問に、「ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップとは、部下や後輩の言いなりになることか」「リーダーたるもの明確な指針を示して徹底すべきではないか」というものがある。

ボトムアップは部下の言いなりではない

photo via Pexels

 それに対して私は、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップとは、「部下や後輩の言いなりになることではない」「明確な指針を示して徹底する前に繰り出す手法だ」と答えている。  演習を行なっていると、その勘所がわかっていないので、トップダウンで指示・命令するか、ボトムアップで部下や後輩の言いなりになるかの両極端に陥ってしまうケースが実に多い。  トップダウンのリーダーシップを3つのステップにモデル化すると、「上司が部下や後輩に対して問題点を指摘し、改善方法を指示して実行させる」となる。これに対して、ボトムアップの巻き込み型のリーダーシップは、「部下や後輩が自ら、問題点を発見し、改善策を立案し、実行する」というステップだ。  部下や後輩が、受動的な立場をとるのがトップダウンで、能動的な立場をとるのがボトムアップの巻き込み型のリーダーシップで、この点が抜本的に異なる。

ボトムアップの使い手は極めて少ない

 なにもトップダウンをすべてやめて、ボトムアップに切り替えればよいと言っているわけではない。トップダウンでやらせきらなければならないことは、トップダウンでやらせきればよい。法律を守る、コンプライアンスを遵守する、システムのエラーをなくす……。これらは否が応でも実施させなければならない。  しかし、トップダウンで指示・命令しなくてもよいことまで、トップダウンでやらせていないだろうか? 枝葉末節までトップダウンにこだわっていないか? むしろ、トップダウンではないほうが効果をもたらすだろうことまでトップダウンに固執していないか……? こんなケースが山ほどある。  つまり、状況に合わせて、トップダウンとボトムアップを使いわければよいことになる。しかし、役員から新入社員まで、各層に対してリーダーシップ実践演習をしていると、トップダウンのリーダーシップの使い手は山ほどいるが、ボトムアップのリーダーシップを繰り出せる人は極めて少ないことがわかる。  そこで私は、「演習後一か月間、実践の場面でボトムアップのリーダーシップだけを繰り出してみてください」と申し上げる。そのくらいの心がけをしてもらって初めて、トップダウンのリーダーシップとボトムアップのリーダーシップがほどよく、ケースバイケースで繰り出せるようになるのが実態だ。
次のページ
指示・命令と助言・示唆は違う
1
2
ひとつの質問で合意形成できる! ビジネススキル急上昇 日めくりドリル

ひとつの質問で、合意形成できる! 1日1問で確実にデキるようになる! 年間100社・5000人、20年以上実践してきた能力開発プログラム

バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会