工学的思考がビジネススキルを向上させる! キャリアデザインのカギを学生に直撃

行動が意識を変える

横浜国立大学大学院理工学府博士課程前期1年の大塚直斗氏(右)とモチベーションファクター株式会社代表取締役社長の山口博氏(左)

山口:「演習中も、いち早くスキルを修得して、それも自分のものとして駆使されていたように思います。どのようにしてスキルを自分のものにされるのですか。見たことを再現するということが得意でいらっしゃるのですか」 大塚:「はい、得意ではあります。しかし、スキルを身につけるためには、再現の得意不得意は関係ないと思います。一番大切なのは、アウトプットすること自体だと考えています。  再現が不得意であろうが、自信をもって自分なりにアウトプットしてみる。すると理解が深まり自分なりに定着していきます。積極性の高い私は、他の受講者よりアウトプットの回数が多かったのでいち早くスキルを修得できました」 山口:「私は『意識が行動を変える』のではなく、『行動が意識を変える』のだと思います。少なくとも、前者はとても時間がかかるが、後者のほうが実現するリードタイムが極めて短いと言えます。  模倣であろうが再現して行動するこということが、スキル修得の早道だと考えています。行動で発揮し続けていきますと、自然と意識が変わってくるものだと思います。アウトプット重視の考え方に強く共感します」 大塚:「まさしくそのとおりだと思います。私の周りにも『頭では分かっているが、実行できない』という人が多く見受けられます。どれほど人に影響されようが、最後に行動に移すのは自分自身であり、その最終決定を待っていてはとても時間がかかってしまいます。  プログラムで、パーツ行動を反復演習することでスキルが染みつき、考え方が変わっていくのを実感しました。行動が意識を変えたのです。しかし、そもそもこういった機会がなければ行動することさえできませんでした。『行動が意識を変える』のは個人ではなく組織向けの考え方だと思います。将来、組織変革に携わる際には大切にしたい考え方です」 山口:「パーツ行動が全体を制御するという考え方は、工学的思考と共通性がありますか?」 大塚:「大いにあると思います。工学的思考のなかで、目的をパーツ分解し、全体の枠組みを制御していくことがあります。ある研究目的を達成する手段を導くために、より小さな目的へと細分化していく。これによりトップダウン式に目的までの道筋を明確にします。この思考はパーツ行動が全体を制御する考え方と類似していると思います」

モチベーションファクターを梃にキャリアデザインを実現

山口氏

山口:「私はモチベーションファクター(意欲を高める要素)を2つの志向、6つの要素にわけて捉えています。モチベーションファクターとキャリアデザイン(プラン)とは、密接な関係があると考えています」 大塚:「私のモチベーションファクターを見極めた際は『地位権限』だけが突出した結果となりました。私には、自らの会社を立ち上げるというキャリアデザインがあり、そうすることで自己流の社会貢献を達成し、有名になりたいという気持ちがあります。このような考えの根底にあるのはまさに『地位権限』であり、モチベーションファクターとキャリアデザインとの密接な関係を感じました」 山口:「キャリアデザイン実現のカギは、大塚さんにとっては何でしょうか」 大塚:「視野を広く持って幅広い知見を身につけることです。起業家として有名になるためには並大抵の事業ではもちろん不可能です。人々の生活を変えてしまうような並外れた社会貢献を達成したいと考えています。そうしたときにひとつの専門分野に固執するのではなく、視野を広げて常に多方面にアンテナを張る必要があると考えております。  技術職のようなプロフェッショナル性を極めた仕事も素晴らしいのですが、たとえばコンサルタントのように、幅広い知見を身に付けながら何事にも多角的にアプローチできる人材になりたいと考えています」 山口:「キャリアデザイン実現のために、ビジネススキルをどのように役立てていきますか」 大塚:「実現のためには厳しい環境で早期成長していく必要があります。そうした中で、アクションプランやプロセスマッピングなどのスキルは、無数の業務を効率的・生産的に捌いていくためにすばらしく魅力的に感じました。  またこれらは、ビジネスパーソンとしてだけでなく、大学院生としても研究室での生活で役に立つと感じました。まずはいち大学院生として、そしていち社会人として活躍するために役立てていきたいと思います。  さらには実現後も、組織を作り上げる側としてモチベーションファクターを活用した仕事の適正判断や管理手法はとても有効的だと感じました。修得したスキルは生涯を通して、さまざまな場面で役に立ち、洗練し続けたいと考えています」 <対談を終えて> 「意識が行動を変える」という考え方があるが、私はそうは思わない。「行動が意識を変える」のだと、20年来の演習経験を通じて確信している。見様見真似による再現が得意かどうかということよりも、アウトプット自体がスキルを上げると実感している大塚さんの経験は、まさに行動が意識を変えることを実証したモデルと言えよう。 <取材・文/山口博 撮影/荒熊流星> 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第149回】
(やまぐち・ひろし) モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある
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