「長期収容をやめ、仮放免を出してほしい」入管収容所で、死を賭したハンスト

ハンストを誘発した、長期化する難民申請者の強制収容

東日本入国管理センター

茨城県牛久市にある「東日本入国管理センター」

 今回のハンストは「本気」だ。  茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」(法務省出入国在留管理庁の収容施設のひとつ。以下、牛久入管)には今、難民認定申請が不許可となった人を中心に約300人の外国人が収容されている。  ここで1人のイラン人が5月から始めたハンストはみるみる数を増やし、かつてない規模で「死ぬか、生きてここから出るか」という、死を賭した闘いが続けられている。  彼らが求めるのは「長期収容をやめて『仮放免』を出してほしい」ということだ。仮放免とは、一時的に収容を解く措置だが、絶望的に長い収容生活から脱するため、被入所者が唯一とれる手段がハンストだった。だがその代償は大きく、毎日のように誰かが倒れている。  求められているのは入管の柔軟な仮放免の運用だ。まずは収容の簡単な説明から。  難民認定申請が不許可になるということは、その人に「あなたは難民ではない。母国に帰れ」と強制送還命令を国が出すことを意味する。  だが「弾圧や差別が待っている母国へは帰れない」と、強制送還を強く拒否する人たちもいる。だからといって、法務省はその人たちの日本居住を許すわけではない。そこで「送還の準備が整うまで」ということで収容施設に収容するのだ。  牛久入管での問題は、収容期間が長すぎることだ。昨年末のデータでは、被収容者325人のうち306人が収容期間半年を超えている。最も長いケースで5年超という人もいる。

長期収容常態化の背景には、入管トップの指示

面会室

法務省ウェブサイトより。牛久入管の面会はすべてアクリル板越しに行われる。双方で2人までが入室できる

 筆者は牛久入管で、延べ数十人に面会取材を行った。その取材は刑務所と同じようにアクリル板越しで行われる。詳細は省くが、彼らが一様に憤るのは「刑務所ならば、刑に応じて出所時期がわかる。でも、ここではその基準がまったくない。いつ出られるのですか? 私は難民申請しただけです」ということだ。  彼らが唯一外に出られるのが「仮放免」という措置。逃亡の恐れがなく保証人がいれば、強制送還の前提は変わらないが、一時的に収容が解かれるというものだ。だが、この仮放免がここ2~3年でなかなか出なくなり、長期収容が常態化している。罪を犯したわけではないというのに……。  その背景には、法務省入国管理局長(現・出入国在留管理庁長官)が2016年4月に出した「2020年の東京オリンピックまでに、不法滞在者等『日本に不安を与える外国人』の効率的な排除に取り組むこと」という通知や、2018年2月の「重度の傷病者等を除き、収容を継続せよ」との指示がある。これが長期収容の原因であることは疑いのないところだ。
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100人にも達したハンスト参加者
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