ミーガン・ラピノーが立ち向かう社会。大統領やプロ野球選手からも飛んでくる心無い批判とそれに抗う「力」

Megan Anna Rapinoe

Photo by FRANCK FIFE/AFP/Getty Images

 今月行われたサッカー女子W杯で見事優勝を果たしたアメリカ代表。ご存知の方も多いだろうが、そのキャプテンであるミーガン・ラピノーのメッセージが話題を呼んでいる。

給与格差は当然?

 メッセージのひとつは男子チームに比べて、女子チームの報酬が低すぎるというもの。女子アメリカ代表チームは今年3月にも米国サッカー協会に対して、性差別であると抗議している。  日本でのネット世論の反応を見ると、否定的なコメントが多かった。大まかにまとめると、「女子は競技レベルが低い」「男子に比べて人気がないのだから、報酬に差が出るのは当たり前」といった意見だ。  しかし、果たして本当にそうなのか? あくまで筆者の意見だが、競技レベルに関しては、より平等な環境に置かれた場合、男女間の差はあっという間に縮まると思う。  たとえば、世界最大の総合格闘技団体UFCを見てみるといい。‘12年に女子部門が設立されると、当初は男子との差が大きすぎると否定的な意見が多かった。恥ずかしながら、筆者も女子のカードが組まれるとガッカリしていたうちの一人だ。  しかし、そこから7年経ったいまはどうだろう? 大会のメインカードに女子の試合が組まれることすら当たり前になっている。男子以上にアグレッシブな試合も多く、当初のような技術面の差はほとんど見られない。気づけば筆者も多くの女性選手の試合を楽しみにしている。

欧州でも女子サッカー熱が沸騰

 サッカーにおいても、男子と同じような環境で試合や練習を行えるようになれば、競技レベルは急速に発展するはずだ。  続いて、「男子に比べて人気がないのだから、報酬に差が出るのは当たり前」という主張に関してだが、ことアメリカに限って言えば、W杯6度優勝という結果を見てもわかるとおり、女子サッカーは実力・人気ともに男子を上回っている。  また、今年3月にはイタリアの名門、ユベントスの女子チームが男子と同じスタジアムで試合を行ったところ、4万人近い動員を記録。国や地域にもよるが、女子サッカーをひとくくりにして、「人気がない」と言い切るのには無理があるだろう。  男女格差の是正を求めるラピノーの発言に対しては、W杯の決勝戦でも観衆から「イコール・ペイ」という合唱が起きている。
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「ホワイトハウスには行かない」発言の真意
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