「トラック運転手は“底辺職”」!? 謂れなき偏見に物申す

休憩するドライバー

ハンドルの上に足を載せて寝るのも足のうっ血を防ぐ意味もある。大切な休息の時間だ

「トラックドライバーにはなりたくない」?

「トラックドライバーが一般ドライバーに知っておいてほしい“トラックの裏事情”」をテーマに紹介している本シリーズ。  前回は「トラックドライバーの身体を蝕む、過酷過ぎる『バラ積み・降ろし』の実態」を紹介したが、これにはドライバーや物流企業だけでなく、荷主側からも「ドライバーの労働環境の改善を」といった声を多くいただいた。  一方、「トラックドライバーにだけはなりたくない」や、中には「底辺職なんだから辛くて当然」、「嫌なら辞めろ」とする業界外の方からのコメントも今まで以上に散見。  そこで今回は、「トラックドライバーは“底辺職”なのか」を、筆者の当時の心境や、現役トラックドライバーの実情をもとに率直に述べていきたい。

「我慢すれば自分でもできる」は大間違い

 こうしてトラックの事情を書いていると、毎度必ず見られるのが、前出のような「トラックドライバーにはなりたくない」なる文言なのだが、どうか安心していただきたい。こうした気持ちの方々には、トラックドライバーは絶対に務まらない。  皮肉でもなんでもない。筆者含め多くのドライバーが、3日ともたずに辞めていく人たちを今まで数えきれぬほど見てきているのだ。 「“底辺職”は我慢すれば自分でもできる」という前提で考えていたら大間違いなのである。  そもそも“底辺職”とは何なのか。世間が共通して抱くニュアンスは、「給与が安く3K(危険・きつい・汚い)で、人間として扱われない不人気な仕事」といったところだろうが、その定義や“底辺”とする根拠は、元々かなり曖昧だ。  それがゆえに自分の仕事だけでなく、第三者の職の過酷さを表す用語としても軽々しく使われることがあるのだが、他人の職を「底辺だ」とするのは、「職業差別」以外の何ものでもない。  これまで本シリーズでも幾度となく紹介してきたとおり、トラックドライバーの職は過酷だ。傍から“底辺職”と思われるのも、原因の多くはこの過酷さにある。  その図体の大きさゆえに、走っていても停まっていても邪魔扱いされ、荷主に指示されるがまま手荷役作業(手で1つひとつ荷物を積み降ろすこと)し、眠い目こすって長距離運転。これらの運行状況はデジタコ(デジタルタコグラフ)で会社に逐一管理され、荷物事故を起こせばその荷の「買取り」までさせられるケースもある。  また、運転中は「命の危険」と隣り合わせになるだけでなく、下手をすると「加害者」にもなり兼ねず、常に緊張を強いられるため、体力だけでなく精神面からも過酷な仕事であるといえる。
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トラックドライバーの仕事が過酷な背景にある「便利さ」
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