「ハーフってかっこいい」に潜む「差別」。「身近な多文化共生を考える」ワークショップレポート

多文化共生について考えるイベントが開催された

Culmonyの岩澤直美代表

「ハーフってかっこいいよね」「ハーフっぽい顔になりたい」。これらの言葉をどこかで聞いたり、実際に口にしたりしたことがある読者もいるのではないだろうか。  テレビや雑誌でハーフのタレント・モデルを見ない日はない。ハーフは、容姿端麗、語学堪能というイメージがあるが、たとえポジティブなものであっても、こうした固定観念に対して、差別の意識を感じるハーフの人は少なくない。  5月23日、都内にて「身近な多文化共生を考える~『日本人』『外国人』『ハーフ』って誰?~」と題したワークショップが開催された。登壇者は、チェコと日本のハーフであり、小学生を対象に多文化教育を行うCulmony(カルモニ―)の代表でもある岩澤直美氏。ゲストには、アメリカと日本のハーフであり、ミス鎌倉としての活動経験もあるコーリア留奈氏を迎え、トークセッションを行った。  岩澤氏は「大人になってからわざわざ、お金と時間をかけて『差別をなくすためにはどうしたらよいか』と考え、勉強しようとする人はなかなかいない。幼いころから多文化共生という考え方を教育することが大事」と、自身の活動の重要性について語る。

「日本人」の定義ってなに?

 イベントでは、参加者によるグループディスカッションも行われた。参加者は、年齢、性別、国籍も様々だった。中には外国人や、ハーフ当事者の姿もみえた。  その人が何人であるのか、はっきりと決めることは難しい。人によっても、見方によっても定義が異なってくる。例えば、「トマトは野菜なのか?果物なのか?」「頭の薄い人は、どこからがハゲでどこまでがハゲじゃないのか?」といった質問にはっきりと答えられるだろうか。  本来は果物と分類されるトマトは、スーパーでは野菜売り場に売られていて、多くの人が野菜と認識している。どんな人を「ハゲている」と思うかなんて、人それぞれ。太っているか太っていないか、も一緒。最終的には、主観で決まってしまう。その主観に基づいた発言で、人を傷つけてはいないだろうか?  一番参加者を悩ませたのは、ある10人のプロファイルに対して「この人たちは”日本人”なのか?」という問いだった。両親ともロシア人だけれど、国籍は日本で、日本にしか居住したことがないケース。日本人とドイツ人の両親をもち、国籍はドイツだけれど、日本に15年居住しているケース。これはひいては「”日本人”の定義とは何か?」という質問である。  参加者からは「日本国籍を持っていること」「日本に居住していること」「日本のルーツを持っていること」など、様々な”日本人”として定義される条件が挙げられたが、では国籍法が施行されるまで日本人は存在しなかったのか、ルーツというのはどこまで遡るものなのか、など、どこまでいっても線引きは曖昧である。 「結局、どういう人を”日本人”と呼ぶのか、という問いに、意味はないというところにたどり着く。線引きをする必要はない。その人が日本人であろうとなかろうと、その人とのコミュニケーションに何ら変わりはないはず」と、岩澤氏は語る。
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「君は日本人じゃないから、正座で足が痺れるんだよ」
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