丸山議員への辞職勧告決議は筋違い。衆院は懲罰委員会に付託せよ

丸山穂高公式サイト

丸山穂高議員のサイトにはまだ維新の文字が

国会と丸山穂高「戦争」発言の関係

 日本維新の会(当時)の丸山穂高衆議院議員(大阪19区)は、19年5月11日に「北方領土」の国後島にて、内閣府北方対策本部のビザなし訪問事業の訪問団長に対して「戦争で島を取り戻すのは賛成ですか、反対ですか」「戦争しないとどうしようもなくないですか」などと発言(参照:”「戦争で取り返すの賛成か反対か」丸山議員の音声データ” 朝日新聞)し、その後に撤回しました。所属政党の日本維新の会は、発言が大きな批判を受けた後に、丸山議員を除名処分としました。  さて、丸山議員は、日本維新の会の党員や個人としての資格でなく、衆院沖縄及び北方問題に関する特別委員会(沖北特)委員として、衆院の代表者としての資格で、訪問団に参加していました。内閣府の資料によると、北方四島への訪問は92年度から行われ、「交流の一層の拡大」を目的として95年度から国会議員も参加できるようになりました。国会議員の参加者は、原則として衆参それぞれの沖北特、衆院外務委員会、参院外交防衛委員会の委員から募り、これらの委員会から参加者がいない場合に限り、他委員会所属の議員が参加できます。そして、1回の訪問につき、衆院から1名、参院から1名との制限もあります。  そのため、丸山議員の言動に対して、所属政党の日本維新の会としての処分と無関係に、衆院としての対応が必要になります。訪問団に参加している間は、衆院の代表たる沖北特委員の丸山穂高としての言動となっていたからです。衆院として、何らかの責任(責任を取らないという決定も含め)を取らなければならないのです。

辞職勧告決議は筋違い

 朝日新聞等の報道によると、丸山議員に対し、日本維新の会から「辞職勧告決議」を提出する動きがあるようです。日本維新の会の松井一郎代表は、除名処分を下した後に記者団に対し、丸山議員は「辞職すべき」と述べました。それを受けての動きと考えられます。  しかし、いささか筋違いの動きです。なぜならば、丸山議員は、日本維新の会党員として問題を起こしたのではなく、衆院の代表として問題を起こしたからです。日本維新の会と松井一郎代表には、丸山穂高氏を衆院選挙の候補者として公認した責任(公認者が人格・識見ともに優れているとの認定)はありますが、それは衆院の対応の後で考えるべき問題です。繰り返しますが、日本維新の会という一政党でなく、衆院という組織としての責任が問われています。  辞職勧告決議は、衆院としてのルールに則った対応でなく、衆院の意思を示す決議に過ぎません。辞職勧告決議の対象となった議員には、それに従う義務はありません。衆院の多数派が「辞職すべきと考えている」と表明するだけだからです。実際、丸山議員は、決議が可決されても辞職しないと表明しています。  結局のところ、辞職勧告決議案は、日本維新の会の「公認」責任をウヤムヤにしつつ、丸山議員に辞職させない道を用意し、彼の政治生命を首の皮一枚でも残そうとする意味を有します。丸山議員とすれば、次の解散まで議員を続けることにより、ほとぼり冷めて再び日本維新の会から公認や支援を受けたり、国会に議席を持たない極右政党に移籍してカリスマとなったりなど、政治生命の打開策を講じることが可能になります。
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衆院としていかに責任を取るべきなのか?
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