液体ミルクのパッケージ表記で物議。「母乳信仰」は絶対神聖視されるべきなのか?

「母乳が最良」の表示はお母さんを追い詰める?

 グリコが日本初の乳児用液体ミルク「アイクレオ赤ちゃんミルク」を発売してから約1か月半が経った。SNSなどでは実際に利用したユーザーから「めちゃめちゃ便利」といった声が挙がっている。  一方で発売当初、SNSを中心に大きな話題を集めたのが、パッケージに記された「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養」というフレーズだ。この文言は、以前からあった「母乳神話」を助長し、様々な理由で液体ミルクを利用する母親たちに無用のプレッシャーを与えるのではないかと懸念する人が多かった。  3月下旬に明治が販売を開始した、乳児用液体ミルク「明治ほほえみ らくらくミルク」にも、「母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養です」という表記がある。なぜこのような表記がなされるのだろうか。またこの表記は正しいのだろうか。

WHOは生後6か月間、母乳のみで育てることを推奨

「母乳が最良である旨」の記載を義務付けているのは消費者庁だ。同庁は2018年8月、「特別用途食品における乳児用液体ミルクの許可基準設定について」を発表し、「特別用途食品」に「乳児用調整乳」という区分を追加した。これによって国内で液体ミルクの製造ができるようになった。  販売に当たっては「当該食品が母乳の代替食品として使用できるものである旨」の表示を義務付け、さらに「ただし、乳児にとって母乳が最良である旨の記載を行うこと」とした。  義務付けの根拠の一つは、世界保健機関(WHO)が、生後6か月は母乳のみで育てることを推奨していることだ。WHOは、母乳は栄養が豊富なだけでなく、乳児の免疫機能を高め、母乳育児により産後の母体の回復も促し、乳がんなどさまざまな病気のリスクを低減するからだとしている。  またWHOは1981年、「母乳代用品のマーケティング(販売活動)に関する国際基準」を定め、「母乳育児の優位性についての明記」を求めている。
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育児当事者にはメリットの大きい液体ミルク
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