増える「嫌煙」企業。就業中の全面喫煙禁止や喫煙者不採用は妥当なのか?

喫煙者を採用しない星野リゾート

 ソフトバンクやローソンよりも徹底しているのが、全国に旅館やホテルを展開する星野リゾートグループだ。同社では喫煙者を採用しておらず、現在喫煙している人に対しては、入社までに禁煙するよう求めているという。喫煙者が仕事中に何度も喫煙していると作業効率が落ちるだけでなく、喫煙者だけに頻繁な休憩を認めるのは不公平だからだという。(参照:ねとらぼ)  山森さんは、「民間企業がどのような人を採用するのかは自由です。ただ、喫煙者を採用しない、入社までに禁煙を求めるということは、従業員の勤務時間外の行動まで制限するということになります。それは働く人の自由を奪うものではないでしょうか」と話す。

「健康でいろ」は余計なお世話

 喫煙への規制が進む背景には、健康意識が高まり、受動喫煙の害が広く知られるようになってきたことがある。昨年7月には、受動喫煙対策を強化した改正健康増進法が成立した。これを受けて、2019年7月には官公庁や学校、病院の敷地内が禁煙となり、2020年4月にはホテルや飲食店でも屋内禁煙となる。  そもそも健康増進法は、国民に健康維持を求めるものだ。しかし誰しもが健康でいるべきなのか、そもそも健康とはどのような状態なのか、疑問は残る。 「健康でいることを義務付けられるなんて、余計なお世話だと思いませんか。私たちには不健康でいる自由があります。『愚行権』という言葉にもあるように、たとえ健康を害するとしても、たばこを吸う自由があるはずなんです。長生きしたい人は健康な生活を送って長生きできるようにすればいいけれど、大して長生きしたくないという人は怠惰な生活を送ってもいいじゃないですか」  もちろん健康増進法には、疾病を防ぐために、生活習慣の改善を促すという意義がある。疾患の予防ができれば、医療費の抑制にもつながる。しかし、そうした事情があるにしても、個人の自由、それがたとえ「不健康になる自由」だとしても、国家や企業が干渉しても良いのかどうか。今一度考えてみる必要があるのではないだろうか。 <取材・文/中垣内麻衣子>
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