レーダー照射問題、外交問題化した日本側が一方的に投げ出し。「威嚇飛行」も再発生!?

韓国国防部プレスリリース2019年1月22日全文邦訳

(韓国語原文出典:韓国国防部) ―――――――――――――――――――――――― ●日本側の問題認識と対応方式  韓日両国は近しい隣国であり友邦国として今回の事案の処理については、我々が一貫して主張してきたように、両国実務者間の協議を通じて解決すればよい問題であった。国際法と武器体系に対する理解をパターンとして実務会議を開催し、事実関係を把握して誤解を解けば良い事案であった。  しかし日本側は12月21日、我々が追跡レーダー(STIR)(筆者注:この場合、イルミネーターを意味する)を照射しなかったという答弁を出して3時間もしないうちに一方的な主張を込めた記者会見を実施し、12月27日ビデオ実務会議を開催した翌日には我々の反対にも関わらず動画を公開するなど、実務協議を通じた問題解決に対する努力とはかけ離れた態度をとり、年をまたぎ両国間の真実攻防(訳者注:意訳すると「応酬」)によって問題を拡大させた。こうした一連の過程が、はたして友邦国に対する適切な態度であったのか問いたい。  これに反し我々は両国の当事者間の実務協議を通じた問題解決と誤解の解消への努力を一貫して維持しながら、高位級の次元で否定的な一切の言及を自制するなど、両国安保協力関係に否定定な影響を及ぼさぬよう節制した努力を行ってきた。日本側もこうした我々の努力を理解していると考える。 ●日本の哨戒機の低空威嚇飛行について  日本側は東海(筆者注:日本海)の韓日中間水域(筆者注:日韓暫定水域※1)で北朝鮮の遭難漁船に対し人道的救助作戦を進行中である我が艦隊に対し、持続的な威嚇飛行を実施した。日本側は我々の艦艇がどのような任務を遂行しているか知らず、持続的な観察飛行を行ったといい、わが艦艇の遭難漁船救助作戦自体を認知できなかったと主張した。  我が艦艇と哨戒機の間の通信未受信問題を論拠とする日本側が、遭難漁船の救助を要請する緊急通信を聞くことができなかったということ自体が理解できないことであり、日本側の動画にも乗組員が我が海警のゴムボート2隻と、遭難中の木造船を見てこれに言及しており、当時の救助状況を認知できなかったというのは常識に合わないことである。  低空威嚇飛行と関連し、日本側が「低空飛行」をしなかったと主張するのは最も理解しがたい部分の一つである。最低安全高度150mは国際民間航空条約では軍用機に適用されないことを日本側も結局認めたが、民間航空機でさえ150mは人や建造物がない場合でも安全のために遵守しなければならない最低高度である。つまり、150mは日本側が言うような「十分な高度」ではなく、必ず避けなければならない「低高度」であることは常識である。  参考までに、我々の哨戒機は不審船舶の監視など特殊作戦以外には高度約300m、距離約5500~9000mを飛行し、探知装備の性能などを考慮するとこの程度の距離でも十分に相手の艦艇を識別できる。しかし、日本の哨戒機が高度150mと距離500mまで接近して低空威嚇飛行をしたのは、友邦国の艦艇を不審船舶とみなし施行する偵察行為であるとしか理解できない。  問題は「威嚇飛行」である。当時、我が艦隊の乗組員たちは日本の哨戒機の低空飛行を明らかに威嚇的に感知した。友邦国の艦艇が救助活動中であれば協力するのが常識であるのに、緊迫した救助活動を進行中の我が乗組員が、騒音と振動を感じるほどに艦艇を横切る進路飛行と、近距離横断飛行と類似する飛行を行った。日本側がこのように意図的に救助活動を妨害する非紳士的な行動をした点は非常に遺憾であり、我が艦艇に対する低空威嚇飛行再発防止を強く要求する。  こうした日本側の低空威嚇飛行にも関わらず、IFF(彼我識別裝置)(筆者注:敵味方識別装置)ですでに友邦国の航空機であることを確認したため、救助活動に専念している状態で近接する航空機を光学カメラで再確認しただけである。友邦国の航空機ではない、未識別の航空機が持続的に接近したならば、自衛権的措置を行ったであろう。  日本側は以前にも類似の活動を我が艦艇に実施したことがあるが、問題提起をしなかったと主張しながらも1月14日、シンガポールで開催した実務会議の際、日本側は「その他の国が類似する飛行パターンを見せた場合、抗議せずにいられますか」という質問に対しては、まともに答弁できなかった。自身が不満や脅威を感じるようなことを他者に行ってはならない。日本側は必ず、低空威嚇飛行を謝罪し、再発防止を約束しなければならない。 ●追跡レーダー照射の可否について  繰り返すが、人道主義的遭難救助活動中であった我が艦艇は日本側の哨戒機に追跡レーダー(STIR)を照射しなかった。友邦国の航空機に威嚇的な追跡レーダーを照射する、いかなる理由もない。それに関わらず、我々は日本側の主張を深刻に考慮し、細密な検証作業まで行った。当日と同一の条件で実施した2回にわたる戦闘実験、乗組員のインタビュー、戦闘体系および貯蔵された資料分析などを通じ、当日、我が艦艇から追跡レーダー(STIR)が照射されなかったという明白で科学的な結論に至った。  追跡レーダー照射は、日本側が関連レーダー周波数の正確な情報を提示し、両国の専門家が科学的かつ客観的な検証を行えば明確に確認できる問題である。しかし日本側は自身が収集した未詳のレーダー周波数の確認のため我が艦艇の追跡レーダー全体の周波数の諸元をともに公開しようという主張を繰り返しているが、これは友邦国に対し非常に不適切な態度である。  艦艇の周波数の諸元情報は非常に高いレベルの軍事機密事項であり、これを公開する場合、機密が漏出し我が艦艇の武器体系をすべて変更しなければならない問題に直面することは日本側もよく知っているはずである。実務会議でこうした絶対的な非対称性を持った情報を交換しようという主張を曲げない日本側の意図がわからない。  日本側が公開した1月21日の電磁波接触音は、我々が要求した探知日時、方位、電磁場の特性などをまったく確認できず、実態を知ることのできない機械音である。そして日本側自らも「自身が探知したレーダー波の情報と、わが艦艇のレーダー波の詳細な性能情報を組み合わせて総合的に判断すれば客観的な事実が認定される」と、自分たちの分析にのみ依拠し両国の国民と国際社会を対象に、事実関係を覆い隠す主張をするのは理解ができない。  日本側の根拠なき電磁波受信音は単純な機械音であり、当時、多様な種類のレーダーが運用されていたためこのような加工された機械音を我々の追跡レーダーの電磁波受信音であると断定する根拠がまったくない。また、日本側がシステムログファイルを提供しなかったため、当時獲得した電磁波受信音であるということすら確定できない。  追跡レーダーの照射を受けたという日本の哨戒機の飛行の様子も当時の状況とは合わない。通常、航空機が追跡レーダーの照射を受けると最大に増速し、回避飛行をするのが一般的であるが、それに反し日本の哨戒機は増速もせず、むしろ一次照射を受けたと主張した時点の後、我が艦艇の方向へと旋回する非正常的な機動を実施した。 ●その他、日本側の主張と関連して  日本側は、当日は快晴であったと主張するが、当時の海の環境はそれほど良くなかった。波高は1mではなく、気象庁の日記予報からもわかるとおり、1.5~2m程度であり、遭難救助環境は良くなかった。こうした状況は日本側の動画で見られる海上の白波と、我々の動画で提示された救命艇からみる水平線の傾斜からも十分に感じ取ることができる。  通信関連について、日本側が主張した3種類の無線呼出のうちただ一種類のみ、かろうじて清聴できたのが事実であり、残り二回の呼出は録音すらされていなかったことを確認している。これに沿って我々は、残り二回の呼出が実際に送出されたのか確認できる録音記録などを日本側に要請したが、何ら返答がない。  受信が可能であったVHF 156.8MHzでの通信呼出も雑音過多、受信感度不良、日本側操縦士(筆者注:通信士では?)の不正確な英語の発音により、通信において「Korea South」と言ったところを通信当直者が「Korea Coast(海警呼出)」と聞き間違えたと日本側に説明したのである。  日本側は、先に言及したとおり我が漁船の北朝鮮漁船救助緊急通信(筆者注:韓国漁船からの救助要請通信のこと)をまったく聞き取れなかったと主張しており、そのため哨戒機はわが艦艇が救助するのかわからず、接近したと抗弁している。  実務協議で、艦艇生活を長く行ってきた我々の担当者が言ったとおり、海で最も頻繁に起きる現象の一つが通信不良である。通信の受信状態は送信機と受信機の装備状態によって大きな影響を受ける。両国間のこうした問題を解決するための改善方案を議論の鍵として共感しつつも、我々に一方的な措置を要求するような発言をすることに対し、遺憾の意を示すところである。 ●結論  今回の事案の本質は、人道主義的救助活動中であった我が艦艇に対する、日本の哨戒機の低空威嚇飛行である。日本側は我が艦艇に対する低空威嚇飛行を認定し、再発防止対策を樹立することを求める。  我々は日本側が両国の関係と韓米日協力、さらには国際社会の和合に何のメリットにもならない不適切な世論戦をこれ以上行わないことを再度、厳重に求める。我々の立場は、我々がこれまで持続的に強調したとおり、レーダー音の発生時点と電波の方位、周波数の特性など正確な情報を提示し、両国の専門家が参与する中で科学的かつ客観的な検証を受けることであった。日本側が決定的な証拠を提示できないまま、実務協議を中断した事実に対し、強く遺憾の意を表明する。  今回の事案にかかわらず、我が政府は公告した韓米連合防衛体制とともに、韓日保安協力強化のために努力は引き続き発展させていくだろう。 (終) ――――――――――――――――――――――――
日韓暫定水域

via Wikimedia Commons(CC BY SA)

筆者注※1:日韓暫定水域:竹島に関しては、日韓双方が領有権を主張したことから、竹島をないものとした海域の中間線付近に暫定水域を設置。両国がそれぞれのルールに従い操業するとともに、日韓漁業共同委員会を設置し、操業条件や資源保護を協議、勧告することとされた。(Wikpediaより)  韓国の主張通り、事態発生が竹島の北東200kmであれば、暫定水域内であって日本の排他的経済水域(EEZ)ではない。防衛省からは、能登半島沖の日本のEEZ内という発表のほかは座標に関する情報は発せられていない。  なお、大和堆付近の海域は日韓暫定水域に多く含まれる。大和堆付近の海域では、海上保安庁、韓国海洋警察庁の船艇間でインシデントが生じており扱いには慎重を要する。
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再び「低空接近飛行」か?
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