映像で確認する「ご飯論法」(初級編)。高プロが労働者のニーズに基づくという偽装を維持した詐術

実際には存在していた「記録」

 その後、この高プロへのニーズを表すとされるヒアリングについては、何人に聞いたのか、いつ聞いたのか、どういう内容を聞き取ったのかと、野党の追及が続いていく。  最初は「幾つかの企業とあるいはそこで働く方からいろいろなお話を聞かせていただいているということであります」(2018年5月9日衆議院厚生労働委員会)という曖昧な答弁を行っていた加藤大臣だが、次第に記録を出さざるを得なくなり、12人のヒアリング結果を開示することになるのだが、それは、それぞれわずか数行のもので、高プロへのニーズを表明しているとは読み取れないものが並んでいる代物だった。  それで、その労働者たちには高プロが労働時間規制の適用除外制度であることをきちんと説明してヒアリングをしたのかと問うたのが、上に紹介した2018年6月7日福島みずほ議員の質疑だ。それに対して、山越労働基準局長は、「いずれにいたしましても」と答弁を拒否したのである。  その後、この12人のうち、3名は2015年に、残り9名は上述の浜野議員に対する答弁が行われた2018年の1月31日以降にヒアリングが行われており、法案要綱が諮問される前に行われたヒアリングはゼロだったことが判明していく。  また、上に挙げた2018年1月31日の国会審議映像では、あたかも加藤大臣が研究職の方の要望を直接聞き取り、研究者の方が高プロへのニーズを語ったかのように受け取れる答弁を加藤大臣は行っているが、実際にはこのヒアリングは2015年3月に行われており、加藤大臣は研究職の方の声を直接聞いておらず、さらに、「そういった是非働き方をつくってほしい」と要望したとされる「その方」と研究職の方は別人であることも判明していく(このあたりの経緯については、下記記事を参照)。 ●高プロのニーズ聞き取りについて、加藤厚生労働大臣が1月31日に虚偽答弁を行っていたことが判明(上西充子) – Y!ニュース2018年6月8日【こそあど論法】加藤厚労大臣 2018年1月31日参議院予算委員会(犬飼淳)note 2018 年6月15日  そして、高プロは労働者が望んでいるから働き方の選択肢として設けるのだ、という政府の説明は、破綻していくのである。それでも結局最後には、これは経済界からのニーズだと安倍首相が開き直って強行採決に至るのだが(その様子は、2018年6月25日の参議院予算委員会の下記の質疑で確認できる)。(国会パブリックビューイング「第1話 働き方改革-高プロ危険編-」9分54秒~  そういう経緯を踏まえてみれば、2018年1月31日に「記録はあるのか」と浜野議員に問われた加藤大臣は、労働者が高プロを望んでいるという「作り話」を維持するために、「記録を出せ」と言われないように慎重に答弁する必要があったのだとわかる。記録があると言ってしまえばそれを示せ、ということになり、示すとボロが出るような内容であるため、出せなかったわけだ。
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「ご飯論法」は不都合な真実を隠す詐術
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