通勤用特急列車が新登場。平成最後のダイヤ改正で特急が“日常の乗り物”に

 12月14日、JR各社から来年3月に実施予定のダイヤ改正の概要が発表された。大きな動きとしてはJR西日本のおおさか東線の延伸開業やJR北海道石勝線夕張支線の廃止などがある。また、東日本大震災以降不通が続いていたJR東日本の山田線宮古~釜石間が復旧、三陸鉄道に移管されて既存の北リアス線・南リアス線とあわせて「リアス線」として開業するのもビッグニュースのひとつになるだろう。

座って帰れる通勤特急が増加

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 そんななか、鉄道ライター・境正雄氏が指摘するポイントが「特急列車の変化」だという。 「今回のダイヤ改正では新たな特急列車がいくつか登場します。たとえば、中央線を走る特急『はちおうじ』『おうめ』。JR西日本でも特急『らくラクはりま』が運転を開始します。ここ数年、新幹線を除くと特急列車は明らかに衰退傾向にありましたから、新たな特急の登場は来春のダイヤ改正でのひとつのポイントと言えます」  見逃せないのが、こうした“新”特急の特徴である。「はちおうじ」「おうめ」は現状走っている「中央ライナー」「青梅ライナー」が廃止され、その代わりに設定される特急列車。「らくラクはりま」は大阪~姫路間を1日1往復だけ運転される通勤用の特急列車だ。 「最近の鉄道業界の傾向のひとつに、大手私鉄各社による相次ぐ“着席列車”の投入があります。京王線の『京王ライナー』や西武の『S-TRAIN』などがそれ。こうした動きはJRにも波及しつつあり、JR西日本は新快速に有料着席車両『Aシート』を導入します。ダイヤ改正でデビューする特急もこうした“座って帰れる通勤電車”のひとつ。今までは特急といえば都市間を結んで長距離を走る列車というイメージでしたが、それが“通勤用”へと性質を変えつつあるということですね」  新幹線網の充実や航空機を気軽に利用できるようになっていることなどを受けて、長距離を走る旅行や出張、帰省用の特急は徐々に本数を減らしつつある。むしろ都市部を走る短距離の通勤型特急が増えている、というわけだ。  特急といえば、新幹線ほどではなくても旅行などの特別なときにだけ乗ることのできる“ハレの日の列車”というイメージを持っている人も多いだろう。しかし、それは過去の話になりつつあり、今や特急は“日常の乗り物”になっているのだ。  だが、こうした流れに対する批判的な意見があるのも事実だ。中央ライナーを日常的に利用して帰宅していたという40代の男性は「今までのように気軽には使えなくなるので困る」と打ち明ける。 「中央ライナーは特急ではなく単なる全車指定席の列車なので、指定席料金だけで乗ることができた。ところが、特急『はちおうじ』に変わってしまうと特急料金もかかるようになるってことですよね。中央ライナーだったら新宿から八王子まで510円で乗れたのに、もっと高くなってしまうとちょっと……」
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中央線新特急では料金体系も変化
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