米国を切って、中国との「同盟」に鞍替えするパナマ

パナマ運河にかかるセンテニアル橋 photo by skeeze via pixabay(CC0 Public Domain)

 11末にアルゼンチン・ブエノスアイレで開催されたG20首脳会議の後、中国の習主席はパナマを訪問して19項目に亘って合意書に署名した。

パナマで存在感を増す中国

 1999年12月31日をもってパナマ運河は米国の統治からパナマ政府に引き渡された。スペインの建設会社サシールがコンソーシアムを組んで2016年6月にその拡張工事が終了。その開通の第一号コンテナー船は中国船であった。その為に、中国の船会社は58万6000ドル(6450万円)をパナマ運河当局に支払ったと推測されている。現在、中国の積載通過利用率は米国に次いで2位となっている。(参照:「Clarin」)  パナマは昨年6月に台湾と断交して中国と国交を結んだ。それ以来、パナマの中国との関係は急成長している。

台湾を切って中国に接近したパナマの事情

 それにしても、台湾の蔡総統は昨年6月にパナマを訪問して二国間の協力と支援を再確認したばかりであった。台湾にとって足をすくわれた感じだ。但し、パナマと中国が国交を結ぶ2週間前から台湾政府はパナマ関係当局の態度に変化を感じるようになっていたそうだ。(参照:「El Pais」)  パナマ政府にしてみれば、同国の経済を支える運河の2番目の利用国である中国と国交がないという状態は放置できないと考えていたらしい。  しかし、米州機構(JAS)のパナマ元大使ギリェルモ・コチェスは「全てが余りにも早く、しかも秘密裡に展開した。パナマでは不透明な合意というのは経験し過ぎる程だ」と述べて、パナマ人がフアン・カルロス・バレラ大統領の透明性に欠けることに不満をもっていることを代弁した感じだ。  中国と国交を結んで以来、バレラ大統領が経済、移民そして文化の分野で中国と色々な合意を結んだことに、パナマ人は気分を害しているという。というのは、中国との合意には透明性に欠けるからである。(中国を)新しい同盟相手として受け入れる方向に急ぎ向かっているのではないかという懸念を市民が感じているのである。(参照:「Univision Noticias」)  その一面をバレラの行動に見ることができる。米国は1999年にパナマ運河そして米軍基地などをパナマ政府に返還したのであるが、バレラは太平洋からパナマ運河に入る沿岸地域で嘗て米軍が占拠していた最高の土地を秘密裏に中国に提供してそこに中国大使館を設ける話を進めていたというのである。売国奴的なバレラの行為にパナマ市民は憤慨し、バレラはそれを恥じたのか、パナマ市内の高層ビルに大使館を設ける用意をしたという。
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