入管法衆院強行採決前日の首相・法相答弁の誠実さを可視化。論点ずらしと質問無視が明らかに

山下法相、冒頭から論点ずらし

 入管法改正の第一の論点となったのは、この改正が従来は禁止されていた「単純労働」分野での外国人就労を認めるものになるのか否かという点だ。政府は一貫して「一定の知識・経験を要する業務」に限ると主張しているが、その定義が曖昧なまま政府は拙速に法案を通過させようしていた。  この単純労働について法務省は「例えば土を右から左に動かすだけの仕事」と例示をしており、この例示を維持するのかを問うた山尾議員。これに対する山下法務大臣の回答がこれだ。 「お答えいたします。今回の受け入れにおいては、個別の作業に着目して単純か否かを判断するものではなく、従事する業務を総体として、たとえば各業務を構成する複数の作業の内容とか、手順であるとか、要求されるスキルであるとか、知識であるとか経験であるとか・・全体として評価するわけでございます。その上で一定の専門性・技能を有するかについて評価するものであります」  判定は、発言全体が「質問と無関係」「論点のすり替え」であり、当然「赤信号」だ。  冒頭の1段落目、山下大臣は一言目(今回の受け入れにおいては)からあからさま論点をすり替えている。 山尾議員の質問:土を右から左という例示を維持するか否か 山下大臣の答弁:専門性の評価基準  この間、すり替えに気づいた山尾議員は「質問に答えてください」と何度も抗議するも、山下法務大臣は完全に無視して一方的にすり替えの答弁をまくし立てた。 「で、ということで、まあ、一般的抽象的にここで例を示すという事は先ほど申し上げた総合的な評価、それをやることを、なるということをご理解頂いた上であれば、やはりここは適当ではないということになります」  最後にようやく「適当ではない」という回答を述べた山下大臣。  すかさず山尾議員は「では、法務省の例示は撤回するということでありました」と結論部分を簡潔にまとめて、次の安倍総理の質問へと移っていく。
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質問の繰り返し、無意味な言葉の安倍総理
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