腐敗が横行した右派政権時代に終焉。メキシコで貧困と腐敗の撲滅を若者に訴えた左派大統領が誕生。その名はアムロ

Photo by Manuel Velasquez/Getty Images

 ラテンアメリカでGDP2位の国、メキシコの次期大統領選挙が7月1日に行われた。その結果、左派政党「国家再生運動(MORENA=Movimiento de Regeneración Nacional)」が初めて政権を担うことが決まった。  メキシコで1934年以降、就任期間6年で再選不可となってから、右派2大政党「制度的革命党(PRI)」と「国民行動党(PAN)」による80年余りの政権に終止符が打たれることになったのである。  次期大統領に選ばれたMORENAの党首アンドゥレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(通称「アムロ」64歳)はPRIとPANからそれぞれ擁立された候補者を大差で破っての勝利であった。(参照:「メキシコでトランプに『物申す』大統領誕生の可能性高まる。彼の名は『アムロ』」)メキシコの全自治州で日本の自動車メーカーが進出しているグアナフアト州を除いた全ての州でアムロが勝利した。

メキシコ市の殺人と車の盗難を減らした男

 アムロは1976年にPRIに入党したが、12年後に民主革命党(PRD)に移籍。2000年からメキシコ市長になり、その実績が認められて2004年に創設されたワールド・メイヤー世界最高市長ランキングで同年度の2位に選ばれている。彼の実績とは、メキシコ市の殺害件数を14.5%車の盗難を32.7%、それぞれ減少させたということである。その一方、アムロの市政下で恐喝が111.26%増加したという事実もあった。(参照:「El Confidencial」)  その後、アムロはPRDに復党して、2006年と2014年に大統領選挙に立候補している。2006年の選挙ではPANのフェリペ・カルデロン元大統領と接戦の末敗退したが、アムロへの票が賄賂で売られてフェリペ・カルデロンに流れたと噂されているが、その確たる証拠は掴めなかったという。2014年はエンリケ・ペーニャ・ニエト現大統領と対戦して敗れている。この選挙に臨むにあたって、2014年にPRDを離党して、彼の政治思想をより反映されるべく彼の政党を創設した。それが国家再生運動(MORENA )である。その甲斐あってか、アムロにとって3回目の挑戦となる今回の選挙で、三度目の正直ということわざの通り、当選を果たしたのだ。

右派の敗因は犯罪と賄賂とトランプへの弱腰外交

 左派系の政党が2大政党の牙城を崩した要因というのは、エンリケ・ペーニャ・ニエトのこの6年の政権で犯罪と賄賂は横行し、また警察などが犯罪組織に絡み証拠不十分で犯人の逮捕も出来ない状態になっていたということが大きな要因だ。例えば、2017年におよそ2万5000人が殺害されている。今回の選挙キャンペーン中でも、130人の候補者と政治家が殺害されているのである。また経済も後退し、米トランプ大統領の前に弱腰外交といったような事態に多くの国民はうんざりしているのである。そこで、およそ8900万人の有権者はこれまでの既存政党からの脱皮に関心を示すようになっていた。(参照:「El Confidencial」、「Contra Linea」)  国民の2大政党からの離反の度合いが如何に強いかを示す数字として、PRIに投じられた票数は2012年の選挙の時に比べ61%減だというのである。(参照:「Sin Embargo」)  今回の選挙では、大統領選挙以外に、下院と上院の628議席、地方自治体の市長そして議員らの17673人のポストが大統領選挙と同時に実施され、18311人の官僚のポストが決まることになっている。そして、選挙の結果、下院と上院はMORENOが連携した少数政党を合わせて過半数の議席を獲得した。自治体の首長は依然PRIが主要都市でポストを維持する結果となった。しかし、大統領と両院が同じ政党で過半数を占めることになったというのは久しく起きなかった現象である。
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「若者の味方」と主張したアムロ
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