コロンビア大統領選、決着せず。6月の決選投票次第では再びFARCとの和平分裂で混乱の可能性も

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ノーベル平和賞を受賞したサントス大統領。次期大統領は残った課題を引き継ぐことになる。photo by Cancillería del Ecuador (CC BY-SA 2.0)

 5月27日に南米コロンビアで大統領選挙が行われた。この選挙で選ばれる大統領がコロンビアで半世紀存在してきた武装ゲリラ組織コロンビア革命軍(FARC)との和平交渉の行方を左右することになるのである。和平交渉の内容に伸展が見られるのか? それとも武装組織の再生を導くことになるのか?  話を進める前に、コロンビアという国の国際的な位置づけを簡略に説明しておきたい。日本では良質のコーヒーの産地コロンビアくらいしか知られていないからである。

大統領選の結果次第では再び内戦も!?

◎コロンビアはラテンアメリカにおいてGDPでブラジル、メキシコ、アルゼンチンに次いで4番目の規模で、チリがそれとほぼ同等の規模で5番目に位置している。 ◎麻薬消費量が最大の米国にとって、コロンビアは90年代から麻薬の供給国として発展して来たことから、米国はコロンビア政府にその取り締まりの為の資金を提供し、軍事面からも麻薬組織と戦う為の指導をして来ている。その関係もあって、コロンビアはチリと同様に南米で米国から最も信頼されている国である。 ◎歴史的にコロンビアはベネズエラと大コロンビアという国家を形成していた関係もあり、混迷を深めているベネズエラから市民のコロンビアへの移民が急増しており、コロンビアの経済そして社会に影響を及ぼしている。 ◎コロンビアはメキシコ、ペルー、チリとの4カ国で太平洋同盟を構成している。アジアとの貿易伸展を計っている。 ◎大統領選挙が実施された24時間後に、コロンビアは北大西洋条約機構(NATO)に正式に加盟したことをフアン・マヌエル・サントス大統領が発表した。ラテンアメリカから最初のNATO参加国となる。これに一番脅威を感じているがベネズエラである。また5月30日には経済協力開発機構(OECD)にも加盟することになっている。  これらが、現在のコロンビアという国の国際的なポジションである。  そんなコロンビア大統領選挙の重要な焦点になっているのが、サントス大統領の主導でコロンビアで半世紀存続したコロンビア革命軍(FARC)との和平協定が2016年11月に成立したが、今後どのようにその協定を存続させて行くのかという問題なのである。  かつて、20万人が殺害され、行方不明者4万5000人という悲惨な結果を生んだFARCのゲリラ活動だが、先述したように和平協定が結ばれた。しかし、和平協定は結ばれたものの、これまでその内容の中で実現されているのは僅か20%しかなく、今後の交渉はまだまだ必要となっている。その上、その協定の内容について、“FARC側に譲歩しすぎであり、彼らの犯罪は法廷で裁かれるべきだ”という考えから、それを見直すことを表明している右派の存在がある。  その右派からの大統領選立候補者、イヴァン・ドゥケ候補と、サントス大統領による和平協定を尊重したいとする左派グスタボ・ペトロ候補の6月17日の決戦投票に委ねられることになったのだ。ドゥケが勝利すれば、ELNとの和平交渉の継続も難しくなる可能性があるのだ。
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ドゥケvsペドロの勝敗はいかに?
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