不動産差し押さえ執行! そのとき現場は? 語られぬ現代社会の一面

window-3367981_640

不動産差し押さえ現場の闇を追う新連載スタート!

「死刑執行人のようなもの」  私は、自分の仕事を他人に説明するとき、このように話す。  仕事とは、「不動産執行」。  生活の歯車が狂い、立て直しに奔走するもうまくいかず、借りた金や住宅ローンの返済などが滞ると、やがて裁判所から「競売開始決定通知」が届く。  その後「現況調査に関する通知」で日程が調整されると、裁判所の“不動産執行”に基づき、我々がやってくる。  居留守を使おうが、連絡を断とうが、行方を眩まそうが、室内に立て篭もろうが関係ない。  私は、彼らから家を取り上げる血も涙もない“死刑執行人”なのである。  実際に、この仕事では多くの人の死を目にする。追い詰められ、精神を病み、セルフネグレクトに陥るものもいれば、虐待や暴力に走るものもいる。家族が崩壊するケースも少なくない。 「そこには社会の縮図とも言える状況があるんですね」  ドヤ街、ホームレス、老人ホーム、宗教施設、刑務所。にっちもさっちも行かなくなってしまった人々をテーマにしたトークショーやメディアなどに招かれることが多いが、必ずこのようなことを言われる。  人々は社会の暗部を目にすると、「これこそが社会」「これこそが全て」「これこそが真実」と思いたがる傾向にある。  だが、私に言わせるとそれは衣服のシワのようなものだ。どれだけ丁寧にノリとアイロンでキーピングしようが、衣服の“シワ”を根絶することはできないのだ。真実は光も闇も渾然一体なのである。  本稿では、その事例を紹介していきたい。  その日の現場は、最寄り駅から徒歩約15分。緑多く閑静な住宅街というしなびれた言葉がしっくり来る、角地にたたずむ豪邸だった。  債務者は執行官とのやり取りに応じないため、この日の事案は“鍵開け”だった。  今思えば、この豪邸を外から目にした際の違和感は予兆でもあった。1階部分はしっかりとシャッターや施錠で戸締まりがされているが、2階の窓は多くが少しだけ開いた状態で止めてある。さらに窓から覗く網戸のようなものが全てすだれ状に切り裂かれていた。
次のページ
雨戸がすだれ状に切り裂かれていた原因とは……
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会