韓国シャネルがストライキを決行。怒りのあまりジーパンで売り場に立つ

CHANEL KOREAのサイト

 韓国に70店舗あまりあるシャネルの化粧品売り場で、前代未聞の事態が起きている。  美容部員として現場に立つスタッフたちは、従来の黒のスーツユニホームを脱ぎ、ピンクのTシャツにジーパンというカジュアルな私服で接客している。世界的にも圧倒的な人気を誇るシャネルの、新たな販売戦略だろうか?  しかしこの現象が起きているのは、韓国だけ。世界的ブランド「CHANEL」を揺るがしている、韓国人スタッフたちの行動の真意とは。

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 もともと、デパートの販売スタッフたちは、開店前に身なりを整えるところから1日が始まる。  髪の毛をくくったり、ユニホームに着替えたりするレベルの話ではない。指定通りの髪型にし、メイクを綺麗にととのえ、シャネル製品を身につける。なかには、40~50分前に出勤する者もいる。当然、この身支度の時間は、勤務にはあたらない。  シャネルの従業員たちで構成される労働組合がこのたび、運営会社である「シャネル コリア」に月給の賃金引き上げ案を提示した。  シャネル労働組合によると、国内売り場の販売職員の70%が最低賃金基準にも及ばない給与で働いている。要求したのは、基本給0.3%の引き上げ。月給を200万ウォン(約20万2700円)とすると、一月につきわずか約6000ウォン(約600円)だ。  しかし、シャネル コリアはこの要求を拒否。基本給以外にも成果歩合や各種手当てなどを加えると、販売スタッフが受け取る賃金水準は決して低くないと反論する。  会社側が反対したことによって、販売スタッフ達は争議行為に出た。それが、冒頭の「私服販売」である。デパートの化粧品売場には、「ストライキ中です」と書かれたボードまで見られた。  シャネル コリアは今年初旬、最低賃金の引き上げを理由に、製品の価格を2.4%値上げしている。昨年の化粧品の国内売り上げは1680億ウォン(約170億1533万円)で業界トップ。基本給0.3%の引き上げは決して無謀な要求ではない。  賃金のほかにも、労働環境の改善を求める声があがっている。  会社側は従業員たちの長時間労働を是正するため、月に数回のフレックス制度を取り入れ、積極的に促している。しかし、現場では人手不足のため、制度がまったく機能しない。  むしろ、無理やり遅番・早番に分けることによって、オープン前と閉店後の作業はすべて一人でやらねばならず、一人当たりの労働の負担は増えた。  ソウル市内のデパートシャネル化粧品売場の店長は、「人員がぎりぎりな状況で有給休暇やフレックス制度を促す指示は、結局のところ、ワンオペでオープンや締め作業を担当しろといっているようなもの」と訴える。(参照:市場経済新聞)  1日平均10~11時間、時には12時間という長時間労働を週6日以上。長時間働きながらも、受け取れるのは最低レベルの給料。これではストライキも起こるはずだ。
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労働組合がひねりつぶされる現実
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