「パチンコ自己・家族申告システム」運用とギャンブル依存症対策の課題とは?

Flatpit / PIXTA(ピクスタ)

 国会では「IR実施法案」の審議が大詰めを迎えており、付帯して「ギャンブル等依存症対策基本法案」も本国会で可決されそうな流れである。  メディアでも、ギャンブル依存症に関わる報道や特集が多く組まれ、どちらかと言うと、対策の不備不足が指摘されているが、そのような中、パチンコ業界の主要やホールやメーカー等が多く所属する、一般社団法人日本遊技関連事業協会(以下、日遊協)が、パチンコ店における自己申告・家族申告プログラム導入店における申込数の調査結果を発表した。  そもそもパチンコ店における「自己申告・家族申告プログラム」とは、遊技客本人もしくはその家族が、当該遊技客の入店や遊技の回数や金額等を制限できる仕組みで、事前にパチンコ店に申告をしておけば、申告された上限である遊技回数や遊技金額を超えたタイミングで、店舗スタッフが遊技客に声掛けをするというもの。入店そのものの制限も可能だ。  平成30年2月末現在、「自己申告・家族申告プログラム」が導入されているパチンコ店の数は、全国で2075店舗あるという。  警察庁の発表によれば、平成29年12月31日現在で、全国のパチンコ店が10,596店舗あるので(休業店舗も含む)、約20%のホールに導入されていることになる。  日遊協の発表では平成30年3月6日の時点で、この自己申告・家族申告プログラムに申し込んでいる人数は73名であり、有効期間が終了している(遊技客本人や家族が取り下げている)数を含めると78名が利用したとされた。 「自己申告・家族申告プログラム」の対象者73名のうち、71名は使用金額の制限をかけており、回数制限は9名、時間制限も9名の申告となっている。(※同時に複数の項目で申告が可能)そもそもの入店制限を申告している人は4名である。  現時点では「少ない」という印象が否めないが、まだ世間に広く知られていないという問題もある。 「自己申告プログラム」は、平成27年10月から運用されており、「家族申告」も可能になったのは、平成29年12月から。現時点では約2000店舗での導入であるが、今後2~3年以内には、ほとんどのパチンコ店に導入されると聞く。  この「自己申告・家族申告プログラム」を導入している店舗では、入口や広報エリア、休憩エリアで、シールでの告知を行っていたり、パンフレットを置いたりしている。  ギャンブル依存問題が、より世間に周知され、多くの人が関心を持てば、より活発な運用になるかも知れない。  一方で、申告された内容は、全国のパチンコ店全店で共有される訳ではなく、あくまで、申告された店舗のみでの対応となり、遊技客本人が「どうしても、パチンコ(パチスロ)がしたい!」と思えば、隣の店に行けば良いということになる。  パチンコ業界としては、このプログラムのより広範な活用を目指しているが、そのためにはクリアすべき技術的な問題等があり、今後の大きな課題になる。
次のページ
約2万人の「安心パチンコ・パチスロアドバイザー制度」資格取得者
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会