神戸製鋼は損害賠償リスクにどこまで耐えられるのか?

 衆院選を経て、日経平均は26年ぶりの高値を更新。さらに米国、欧州市場も株価上昇が続いて世界的好景気が到来している。果たして’18年も好循環が続くのか? 闇株新聞氏が注目する経済ニュースから’18年相場を占ってもらった。

賠償訴訟リスク抱える神戸製鋼、不正の意識に乏しい日産の功罪

 ’17年後半は立て続けに企業の不祥事が明るみに出ました。なかでも、神戸製鋼所と日産自動車の改竄問題は深刻なものです。
【神戸製鋼所】

【神戸製鋼所】データ改竄問題で陳謝する川崎博也会長兼社長。子会社でのデータ改竄など続々と“余罪”が発覚して何度も会見を開くことに。 写真/産経新聞社

 神戸製鋼所は10月8日にアルミ製部材の品質データをかなりの長期間にわたって改竄していたことを発表しました。品質基準を偽っていたわけです。それも、当初は「アルミだけ」としながら、5日後には主力の鉄鋼製品でも品質データの改竄を行っていたことを発表しました。不正は神戸製鋼所の子会社にもおよび、品質保証担当者まで関与していたことも明らかになっています。このように問題を小出しにされては、「次は何が出てくるのか?」と考えざるをえません。そもそも、アルミと鉄鋼は屋台骨を支える最も太い2本の柱です。アルミで利益を稼ぎ、鉄鋼で売り上げを立ててきたのです。業績悪化は免れません。  ’17年11月に公表した社内調査の報告書では、収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土、不十分な品質管理手続き、仕様を順守しようという意識の低下などを不正の原因にあげていますが、収益評価に偏った経営は東芝の不正会計問題に関する第三者報告書でも指摘されたこと。「意識の低下」なども同様。要は、過去の例に学ばず失態を繰り返し、同じような報告書を公表してお茶を濁すというお粗末さなのです。  品質データを改竄していた製品の供給先は三菱重工業やJR東海、トヨタ自動車、本田技研工業など日本を代表する企業が勢ぞろいしています。しかし深刻なのは米ボーイングやゼネラルモーターズなど海外の有力メーカーも多数含まれていることです。なぜか株価は底打ちして反発していますが、安全・安心に関わる問題なだけに今後、海外企業から多額の賠償金を請求されることになるでしょう。リコールで1兆7000億円の負債を抱えて経営破綻したエアバッグ大手のタカタの二の舞となりかねません。
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リコールすれば禊は済むけれど……
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◆オリンパス事件と東芝問題を追った新著

 ’11年に明るみに出た「オリンパス事件」をご記憶だろうか? いち早くその真相を解き明かした闇株新聞氏はその後も、オリンパス経営陣や“指南役”と称された元証券マンらの裁判資料の収集や本人への取材を継続。指南役らの最高裁判決が出るのを待って、かき集めた膨大な資料を整理し、『経済事件のつくり方~オリンパス事件と東芝不正会計問題~』(仮題)と題したノンフィクション作品を出版予定だ。なぜオリンパスは事件化して、東芝は事件化しなかったのか……? 忖度と深謀遠慮が交錯する経済事件の裏側を解き明かす。
 オリンパス事件と東芝不正会計問題を追った闇株新聞氏の新著『経済事件のつくり方』(仮題)は’18年発売予定

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