「社員を尊重します!」と、周到な会議準備をするのが無駄なワケ

sh2 / PIXTA(ピクスタ)

「顧客第一主義」「都民ファースト」「社員を尊重する!」よく使われるスローガンだが、これらのスローガン、叫べば叫ぶほど、空虚な思いにかられるのはなぜだろうか。これらのスローガンを繰り返して発せば発するほど、嘘っぽく聞こえてしまう。  演習参加者の率直な受けとめ方をふまえれば、スローガンを口にした途端、行動ではなく言葉で取り繕っているのではないかと思われてしまったり、口にしなければならないほど、出来ていないのはないかと誤解されてしまったりするためだという印象を持つ人が多い。  だとすれば、スローガンなど用いない方がよい。「社員を尊重します」というスローガンを使わずに社員を尊重する行動を積み重ねていけばよい。では、社員を尊重する行動というのは、どういう行動なのだろうか。いろいろな方法を試してみたが、話したい時に話してもらうという方法は、たいへん効果のある、ひとつの方法だ。

話したい人に話させることで、社員を尊重する方法

 例えば、初めて会議に参加した社員が、ひとりひとり自己紹介をするとしよう。一般によく行われていることは、「時計回りで自己紹介をしていきましょう」「名簿順に挨拶してください」……という方法だ。進行役が話す順番を指図する。実は、この方法は、社員を大事にしているとは言えないのだ。  このように言うと、「話し手を指図して、秩序だって、発言させることは、進行役の責務ではないか」「右回り、前から後ろなど、発言の順番を決めることは、社員に話すタイミングをあらかじめ示すことなので、社員を大事しているからではないのか」という反応が返ってくる。  しかし、私が言いたいことは、進行役が話し手を指図することは、話し手の意思を尊重していないし、話す順番を決めることは、話し手の個別の状況を斟酌していないということなのだ。  私が用いる方法は、「話したくなった人から自己紹介をしてください」という進行だ。それにより、早めに話したい人は早めに、じっくり考えたり、他の人の話を聞いてから自分が話したい人はその後にというように、自分のペースで発言できる場をつくりだす。  加えて、この方法は、時計回りや、前から後ろという順番に従って話せというような強制を決してしない方法だ。強制することは尊重していることとは言えない。一人一人の意思を重んじて、ひとりひとりの気持ちや準備が整ったら、話してくださいということを、そのような表現を用いずに、「順番は決めずに、話したい人から話してください」という一言で示しているのだ。
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「会議の準備」なんてやらないほうがいい
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