トランプ関税で注目されたメキシコのアボカド輸出、麻薬カルテルにも狙われていた

photo by GerDukes( CC0 Public Domain )

 最近はメキシコ産のアボカドの日本での消費が伸びている。この数年で、その消費量は2倍に伸びているという。ただ、日本でアボカドの輸入が開始されたのは、米国でアボカドの消費が伸びてからである。  その米国だが、実はアボカドの輸入を過去83年間禁止していた時代があった。その理由は害虫の付着を警戒したからである。2007年に米国の全州で輸入が解禁となったが、特にカリフォルニア州はこの解禁に最後まで反対していた。その理由は2つある。アボカドに付着する可能性のある害虫がカリフォルニアで栽培されているアボカドやオレンジなどに感染することを恐れたのと、メキシコから安価なアボカドが大量に輸入されれば、カリフォルニアのアボカドの生産業者は苦戦を強いられるからであった。  トランプ大統領が当時の大統領であれば、解禁していなかったかもしれない。しかし、米国でのメキシコ産のアボカドの浸透を手助けしたのは米国に在住している3500万人のメキシコ移民である。彼らは米国市場にアボカドで作るクリーム状のソースを紹介した。グアカモーレ(Guacamole)と呼ばれるものである。これを色々な料理にソースのようにして使用できるのである。  解禁となって以来僅か10年ではあるが、3年ほど前からアメリカン・フットボールの優勝決定戦スーパーボールにグアカモーレを関連させるようになって以来、この決勝戦が行われる1週間くらい前からアボカドの需要が急増することになっている。<決勝戦が行われるその日だけで9万5000トンのアボカドが消費される>というのである。  それはメキシコが<2015年に世界に輸出した量のほぼ9%に相当する>そうだ。(参照:「Unvision Noticias」)  そして、現在、メキシコはアボカドの世界生産量のほぼ34%を占め、<年間でおよそ164万トンを生産>しており、米国を筆頭に31カ国に輸出しているという。中国、日本、フランス、オランダなどが主要輸入国である。その輸出総額は20億ドル(2200億円)だという。(参照:「Animal Politoco」)  それほどまでに急成長した「アボカド輸出」。となれば黙っていないのは、メキシコの暗部、「カルテル」である。
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カルテルに目をつけられたアボカド輸出
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