ゾゾタウン、楽天、ソニーなどから見る「売掛金」の注意点

大熊将八
 調査リサーチ会社の東京商工リサーチによれば、「2016年に不適切な会計・経理を開示した上場企業」は、57社(58件)と、2008年の調査開始以来、過去最多を記録したという(:参照)。そんななか、企業が関係会社を利用し、「押し込み販売」「循環取引」などの不正によって売上高の水増しをした場合、伸びる指標が存在する。

ツケ払いサービスを開始したゾゾタウン

売上債権の数値には注意すべき

 それは売上高のうち、まだ代金が未回収なものを示す「売上債権」だ。売上自体が架空なのだから、いつまでたっても代金が入ってくるはずはないが、この貸借対照表に記載される「売上債権」が異常なペースで膨らんでいる企業には注意をしないといけない。

 事実、東芝はPC事業の押し込み販売によってこの指標が伸びていた。また、江守グループホールディングスという元東証一部上場企業は中国現地法人が循環取引を行っていたことで、膨らみすぎた売上債権が回収不能になって倒産した。これらの詳細については拙著『東大式 スゴい[決算書の読み方]』でも扱っている。売上債権を売上高で割った指標である「売上債権の回転期間」が長期化していないか注意が必要だ。

 とはいえ、「売上債権が伸びる=危ない」と一律にはいえず、「売上債権が減っているから大丈夫」というわけでもない。

 まず、会社が事業転換を行えば、自然と売上債権の回転期間は増減する。例えば一時期の日立製作所はインフラなどの政府系の案件をどんどん増やして、長期で行うプロジェクトの比重を高めていたので、回転期間は他の電機メーカーよりかなり長かった。だが、別にこれは怪しいことではない。

⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=133915

 また、ファッション系ECで国内最大手の「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するITベンチャーのスタートトゥディは、昨年より「ツケ払い」を認めるようになった。決済を商品が届いてからできるようにして、よりユーザーを増やそうという施策だ。これによって当然、売掛金は急増し、なんとたったの四半期で倍増した。

「ゾゾタウン」がツケ払い可能なワケ

 もちろんこの「ツケ」を多くのユーザーが踏み倒せば、キャッシュの回収が滞って大問題になるのだが、スタートトゥディはそのリスクを債権回収代行会社のGMOペイメントゲートウェイに負ってもらっている。

 つまり、ツケ払いで発生する分の債権は、そこから数%を割り引いた価格でGMOペイメントゲートウェイが買い取り、スタートトゥディにはそこからすぐキャッシュが入る。その後顧客から債権を回収するのはGMOペイメントゲートウェイだ。

 今後、もし債権回収が滞れば、GMOは契約を打ち切るかもしれないが、ともあれスタートトゥディにはキャッシュが入ることがある程度保証された仕組みである。

 ほぼ同様の理由で、Fintechベンチャーのメタップスも売上債権が急増している。2年間でなんと5倍になり、回転期間は4倍にもなった。同社は「SPIKE」という、少額利用であれば手数料無料のオンライン決済プラットフォームを強化している。取引額が大きい法人相手に手数料を取って儲ける仕組みだ。これもまた、債権回収は代行してもらっているようなので、売上債権が急増しているからといって会社がまずい状態になっていると言えるわけではない。

 逆に、金融業に参入しその比重を高めることで、売上債権の回転期間が短くなるケースもある。典型的なのはソニーと楽天だ。

 電機業界内で競合比較すると、ソニーだけ回転期間が下がり続けているが、それは金融事業の割合が高まっていることによるものが大きい。決済までの時間がほぼ発生しない事業の場合は売掛金がほとんど生じない。

 楽天も拙著『東大式 スゴい[決算書の読み方]』で見たように、Fintech事業が売上の4割を占めるようになるまで成長するにつれ、回転期間は極端に短くなった。これらの場合は、全体では売掛金が下がっていても、他のセグメントにおいては膨らんでいないかを推察する必要がある。

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東大式 スゴい[決算書の読み方]

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