「日本企業の成長に必要なのは『役員力』」。「コーポレートガバナンス・コード」の提案者が断言

大熊将八

内部通報で国から報奨金が出る国・アメリカ

大熊将八氏の新刊『東大式 スゴい[決算書の読み方]』は3月12日発売!決算書を読めば、次の”東芝”は誰でも予測できる!

ベネシュ:報復行為を恐れて何もしないという選択を取ってしまうんです。東芝のケースでも内部の告発者は外部の窓口に行きました。消費者庁のアンケートを見ても、自社を通さずに当局に直行する例が日本では多くて増えているようです。

大熊:なるほど。

ベネシュ:それからこれは憶測の域を出ませんが、日本は労働市場の柔軟性がないという特徴も内部告発を難しくしている可能性があります。

 勇気を持って告発を行っても、類似企業に転職して働ける保証もないので躊躇するのではないでしょうか。

違法ではないが一部不適切

大熊:確かにそれもあるでしょうね。アメリカと日本におけるコーポレート・ガバナンスの違いは企業文化の違いだけでしょうか?

ベネシュ:他にもあります。アメリカはリーマン・ショックのあと、企業のコンプライアンスやガバナンスが不十分だったという反省をしました。法律改正によって内部告発者が経営者に内部通報しなくても、当局に直行して告発し、違反の発見に繋がれば、かかった罰金の10~30%を報奨金としてもらえるようになりました。

 そこで、優秀な企業こそ「潔白になる以外ない」と思って「倫理」という視点を取り入れました。もちろんまだまだ不完全ではありますが。「厳密に言えばこれは法律違反ではない」というような行為はいくらでも可能なので、それはちゃんと社会に対して説明できるような妥当なものかといった観点からコーポレート・ガバナンスを捉え直したのです。

大熊:前東京都知事の舛添要一氏が公費を使って温泉に通ったり、「ヤフーオークション」で絵画を購入していたことに対して、第三者の弁護士による調査書で「違法ではないが一部不適切」という評価が下されましたが、これと同じような話ですね。

ベネシュ:そうですね。アメリカは倫理がなければ、ガバナンスは機能しないと気づいたのです。そして、倫理協会を作り、不正はあったか、報告はなされたかを現場の従業員1人ひとりからアンケートを取って、経営者の倫理観を測るようにしました。そうして問題がありそうなホットスポットを突き止めて、不正を未然防止できるようにしています。

大熊:ガバナンス意識の高まってきた日本企業において、次のステップとして必要なのも「倫理」の観点かもしれませんね。

ベネシュ:そう思って、私は会社役員育成機構という公益社団法人において役員研修を行ったり、ガバナンスの基礎を教えるeラーニングの講座を作り、「役員力」つまり会社役員に必要なスキルセットやマインドセットを伝えているのです。

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日本企業には「役員力」のレベルアップが必要

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東大式 スゴい[決算書の読み方]

あなたの会社は"東芝"にならない!? 不祥事企業は決算書で見破れる!

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