東芝だけじゃない!コーポレート・ガバナンスを毀損し、日本企業を蝕む「プライド」の正体

「プライドと年功序列」が東芝の改革を阻んだ

ニコラス・ベネシュ氏

ベネシュ:’03年に法律が変わって、指名委員会制度というのができました。それを採択した東芝は当時は確かに優等生でしたが、その後、法律が変わらなかったから、自分たちも変えようとしなかった。今では優等生とは言えません。会計がわからないであろう元大使の方が監視委員を務めていたというのは一例です。  会社の中で「著しい損害を及ぼすおそれのある事実」があることを発見した時、取締役は監査委員会に報告しないといけないという「報告の義務」がありますが、トップが問題を起こした時、内部出身の取締役は9人いましたが、1人を除いて全員が報告をしなかったようです。こうした事例を見るに、やはり「プライドと年功序列」が、「役員力」の最善を尽くして会社を改善しようという気持ちを上回ってしまったのではないでしょうか。 大熊:僕はいろいろな企業の財務分析をして、その意外な実態を探ったり、不祥事企業を探し出すという活動に取り組んでいます。3月12日にはこれまでの分析をまとめた新刊『東大式 スゴい[決算書の読み方]』を出版するのですが、決算書を読み解くと、東芝は以前から売上債権の回転期間が伸びていたりと、色々と危険な兆候を読み取れますが、やはり仕組みの上でも東芝のガバナンスには不備があったということですね。 ベネシュ:私はこれが東芝だけの問題ではないと考えています。ガバナンスの観点から見て、これまで優秀だと思われていた他の日本企業も競争優位性を失い、こうした状況に陥っても、なんら不思議ではない時代になってきたということです。東芝が現状に至った理由を考えるには何年も遡らないといけません。  クリエイティビティのない競争戦略を掲げ、うまく行っていない事業から撤退できず、「だって我々は名門東芝なんだから……」というプライドが、PC事業を何としても黒字化しないといけないという焦りを生み出しました。これは’70年代のアメリカ企業とまったく同じです。ゼネラルモーターズもその頃、プライド高く振舞っていましたが、それが災いして、後にいったん沈んでしまいました。それと同様の過渡期にあるのです。  私たち「BDTI」は企業向けの役員研修を行っていますが、多くの会社は「研修なんていらない」と言っていました。ほとんど研修をしていなくても、我々はもう間に合っています、と。研修を必要とするほど、資格のない人を取締役として指名していると、思われたら恥ずかしいというのが主な理由です。でも、完璧な役員、特に新任役員はいません。いたら、研修の場に来て知恵を共有してほしいぐらいですから。 大熊:まさにプライドが邪魔をして、適切な処置をとれていない状態というわけですか。 ベネシュ:そうです。シャープの例を見てください。’12年時点で鴻海から資本提携の提案はあったのに、外国系企業に支配権を渡したくないという理由で死ぬ寸前まで追い込まれてしまい、結局、”ギリギリセーフ”で安く買われることになってしまいました。株主にとっても機会損失です。  東芝についても当初、報道されていたように半導体事業の20%を売るだけでは到底、解決できるはずがないと思っていました。このような場合、取締役会はワースト・ケースを想定してあらゆる選択肢を検討し、早く思い切った決断をしないといけないのに、いつまでも支配権を持っていたいとこだわっていてはいけません。極端にいえば、全社のM&Aも検討すべきかもしれません。
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東大式 スゴい[決算書の読み方]

あなたの会社は"東芝"にならない!? 不祥事企業は決算書で見破れる!

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