東証マザーズの指数先物がついに上場。その使いみちとは?

東証マザーズ指数先物が19日に上場した。急激な円高で神経質な相場が続く日経平均に対し、マザーズ市場はバイオ関連やゲーム関連など個人投資家に人気の銘柄が多く上場しており、資金流入が続いている。マザーズ指数先物上場で相場は活性化するか? 最前線を追った。

待望の上場で国内外の売買も活発に!

 東証マザーズ指数先物が上場した。そもそもどのような仕組みなのか。  マザーズ指数先物は、マザーズ市場に上場する全銘柄を対象として算出される時価総額加重平均型の指数。マザーズ市場は235の国内企業が上場していて、時価総額は約4兆円のマーケットだ。  最低取引単位は東証マザーズ指数×1000円となっていて、20日の東証マザーズ指数は約920ポイントのため、取引金額はおよそ92万円。ただし、全額が必要ではなく、日経225先物などと同様に「証拠金」を担保に入れることで、少ない資金で大きな売買ができる。証拠金額は相場状況などによって異なるが、7月20日時点では8万1000円あれば1単位の売買が可能だ。およそ11倍のレバレッジが利くことになる。

先物上場で個人投資家の投資戦略が広がる

 プロの証券ディーラーたちはマザーズ指数先物上場の影響をどのように見ているのか。某証券会社にて株式ディーラーとして勤務するA氏に話を聞いた。 「建前としては235全銘柄を対象としていますが、マザーズ市場のうちそーせいが約17%を占めているため、一番寄与度の低い銘柄を最低単位買った場合、そーせいを17万株買わないといけないような事態になります。売買代金の大きなそーせいとはいえ、さすがに17万株の買いは大変なことになってしまうので、理論上、全銘柄を買うのは不可能だと思われます。ですから、マザーズ指数と連動性が高そうな100銘柄ほどを選んで、現実的な銘柄をバスケットで買うことになるでしょう」
パフォーマンス比較

’12年12月を100としたときの日経平均とマザーズ指数のパフォーマンス比較。連動性はあまりなく、マザーズ指数のほうが日次変動率は大きい

 また、ディーラーの間では「裁定買い」による現物株の買いが入ると予測している。 「指数が上場した直後は、ディーラーは割高になった先物を売って、割安になった現物を買うという『裁定買い』を行います。そのため、そーせいやサイバーダインのような寄与度の高い銘柄はプラスのバイアスで見てもいいかなと思っています」(A氏)  この裁定買いが積み上がれば、個人投資家はマザーズ銘柄を借りて空売りすることができるようにもなる。当然、空売りができれば売買は活発になる。  また、個人投資家もマザーズ市場で手軽に「ヘッジ」がしやすくなるというメリットもありそうだ。 「例えば成長性の高いトヨタを買い、成長性の低い三菱自動車を売って、その差を取りにいく。あるいは、トヨタを買い、日経225先物を売って、マーケットに対しニュートラルにするといった売買はごく普通に行われています。マザーズ指数先物上場で、『そーせいを買って、マザーズ指数先物を売る』といったポジションが取りやすくなり、個人投資家の戦略も広がるとみられます」(同)
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先物上場で買われるマザーズ銘柄は?
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