英国のEU離脱。次に続く可能性がある国は?

英国の離脱を惜しむメルケル

 一方の、EUの2大リーダー国であるドイツとフランスの動きを見ることにしよう。英国のEU離脱が他の加盟国にマイナス影響を与えないようにドイツとフランスは断固たる姿勢を取る必要があるだろう。まずは、英国が抜けたEUの3大国、ドイツ、フランス、イタリアの首脳会談は6月27日に予定されている。  メルケル首相は英国の離脱を非常に惜しんでいる。メルケル首相がEU内で難しい政策を提案せねばならない時に、キャメロン首相は常に強力な味方になった。ドイツの考えがフランスと対立する時には英国は常にドイツに味方した。またメルケル首相が英国を加盟国として維持することに強い関心をもっていたのは英国がコモンウエルスの盟主であるということであった。メルケル首相はこの英国が歴史的に築いたこれらの国々との将来的な発展に英国の力を借りたいと望んでいたからである。  ドイツは、移民問題がEU加盟国同士の絆をより強めることになると考えていたようである。しかし、結果はその逆となった。メルケル首相は英国がEU離脱が決定したあとの記者会見で〈この反応に焦ることなく冷静さを求めた。それがバイタルであるとした〉、更に〈27か国がどのような反応を示すかは、この突風によって更にEUに分断が生じることがないように努めることだ〉と述べた。(参照『El Pais』)  フランスのオランド大統領は、次期大統領候補のひとりとされている国民戦線のルペン党首がEU離脱を訴えていることを意識して、英国の早い離脱を要望した。そして、大統領は〈ヨーロッパの根底からの再建をリードしたい〉と望み、英国の離脱が決まった数時間後にエリゼー宮殿からの大統領のメッセージとして〈「ヨーロッパの中心に位置するフランスは特別な責任を背負っている。他の国々をリード出来るヨーロッパ大陸の将来を保障する国になる」〉と述べて国民にフランスが担うべき役目を伝えた。(参照「El Pais』)  中東やアフリカからの移民問題がヨーロッパで深刻な政治経済そして社会問題に発展するに及んで、これまでのグローバル化は大きな障害になっている。これからもEUが加盟国の、特に金融財政面で独立性を尊重せずにグローバル化を更に強化しようとして行けば行くほど、ユーロ市民の中に不満が募り、それを利用する勢力が出てくるはずだ。  EUはひとつの重要な局面を迎えている。 <文/白石和幸> しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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