朴槿恵大統領のアポロ計画は実現するか?――韓国の新型ロケット、開発が正念場に

心機一転、着実な歩みをはじめた韓国のロケット

開発中の新型国産ロケット「KSLV-II」 Photo by KARI

 一方、2006年ごろからは、羅老号の次の世代のロケットを開発する計画もはじまっていた。当初はロシアの技術を活用した、羅老号の改良型のようなロケットを開発する計画だったが、前述のようにロシアから期待していた技術移転が得られないことがわかると、独自開発の道に舵を切ることとなった。  実は韓国では、羅老号の改良型ロケット向けのエンジンとして、また同時にロシアとの共同開発の保険として、ロケット・エンジンの独自開発を続け、それなりの成果が出ていた。このエンジンを発展させることで、中型ロケットを独自に開発できると考えられたのである。それが現在開発が進む、朴大統領のアポロ計画を実現させることになる「KSLV-II」ロケットである。  KSLV-IIの性能は、小型・中型の衛星を打ち上げるのに十分というもので、たとえば通信衛星や気象衛星など、大型で遠くの静止軌道まで飛ばす必要がある衛星は、韓国にそれを開発するだけが技術はまだないことから、KSLV-IIによる打ち上げはそもそも考えられていない。つまりKSLV-IIは、韓国の宇宙開発の現状に適した性能になっている。  また、ロケット・エンジンの性能はとりたてて高性能というわけではなく、使っている技術も古くからある手堅いものである。  これらの事実は、ロシアから高度な最新鋭エンジンの技術を手に入れるという向こう見ずな方針から一転、韓国が自力で人工衛星を打ち上げられるロケットを造るためには何が必要かを十分に理解し、実行に移しつつあるということを示している。  KSLV-IIに搭載されるエンジンのうち、推力7トン級の小型エンジンについてはすでにほぼ完成しており、また根幹をなす、推力75トン級の大型エンジンも、5月3日から燃焼試験が始まり、現在まで順調に回を重ね、5月末には30秒間の燃焼にも成功している。今後も開発が順調に進めば、2017年12月にロケットの一部分だけを打ち上げる試験を行い、そして2019年と2020年に、完成形のロケットの試験打ち上げを行う予定となっている。
次のページ
さまざまな可能性を秘めたKSLV-II
1
2
3
4
5
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会