外国人客急増に伴う「無資格ガイド」規制緩和は果たしてうまく行くか?

規制緩和はワークするか?

 答申では、“通訳案内士でなければ、外国人に対して外国語により有償で旅行に関する案内を業として行うことはできないとされている(業務独占)。こうした中、現行の通訳案内士の4分の3は都市部に偏在し、その言語も3分の2が英語であるため近年増加している中国語・韓国語等に対応できないという現状に鑑みれば、通訳案内士の業務独占を維持したままでは、「観光先進国」を目指す上で量と質の両面で対応できないことが明白であるとの指摘がある。“と記されており、中国語・韓国語等に対応し、観光案内できる通訳ガイドが少ないのが明白な課題であるという「課題認識」は共有されている。  しかし、対応策となると、共通のものが共有されているとは言えない状況である。「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」(観光庁)の検討会での各委員の意見を読むと、通訳案内士制度の規制緩和に対して、旅行会社、通訳案内士団体の各委員の意見は「反対意見」のオンパレードである。(参照:観光庁作成資料 ※PDF注意)  他方、「例えば、A、B、C、Dぐらいの5段階ぐらいにして、旅行会社が依頼する観光ツアーには必ず上位レベルの人が従事しなくてはならないこととし、個人の観光客への対応には、下のレベルの人でもよいというような、柔軟な改善策もあるのではないか。」(通訳案内士団体)というような前向きな意見も無いわけではない。  確かに、無資格なガイドが粗製濫造されれば、ボッタクリの土産物店に連れて行かれるようなことや、文化や歴史を正しく伝えられないものも増えるなど問題点も増えてくるだろう。  しかし、現行では非英語圏向けのガイドが圧倒的に不足しており、対応ができないのもまた事実。どうにか、規制緩和がポジティブな方向にワークすることを期待したい。 <文/丹羽唯一朗 photo by IQRemix on flickr(CC BY-SA 2.0)>
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