赤字20億円!ミシュランガイドは生き残れるのか?

そもそも、なぜタイヤメーカーのミシュランがガイドブック?

 とはいえ、今さらですが気になるのが、そもそもなぜタイヤメーカーのミシュランがレストランやホテルのガイドブックを発行しているのかということで、その歴史に触れてみたいと思います。その誕生は、パリ万博が行われた1900年、創設者のミシュラン兄弟がいち早くモータリゼーションの時代が到来することを確信、35,000部を無料配布したのが始まりです。  その内容はというと、郵便局や電話の位置まで示した市街地図や都市別のガソリンスタンド、ホテルの一覧のほか、自動車の整備方法等を載せた、ドライバーの移動や旅行をサポートするものでした。自動車での快適な移動や旅行をサポートして、結果的に自社のタイヤの売上が伸びればOKというコンセプトは、まさに現在のオウンドメディアマーケティングを思わせますね。マスコットキャラのミシュランマンといい、この辺りのミシュラン兄弟のPRセンスは凄いものがあります。

「ガイドはタイヤのためにある」という原則と評価基準

 この「ガイドはタイヤのためにある」という原則は、現在でも引き継がれており、実際に新しい国でミシュランガイドが刊行されると、その国でミシュランタイヤを買おうと思う人が3%増えると言われています。ちなみにガイドの評価基準においても、結構タイヤとの繋がりを感じられます。  トータルパフォーマンスを掲げる、ミシュランのタイヤは(1)グリップ(2)ハンドリング(3)快適性と静謐性(4)省燃費性(5)耐久性(6)ロングライフ、といった全ての性能を追求するとしていますが、ミシュランガイドの評価基準である(1)素材の質(2)調理技術の高さと味付けの完成度(3)独創性(4)コストパフォーマンス(5)常に安定した料理全体の一貫性、と並べてみると何となく同じポリシーが感じられます。  また、三つ星評価の表現も(☆☆☆)そのために旅行する価値がある卓越した料理、(☆☆)遠回りしてでも訪れる価値がある素晴らしい料理、(☆)そのカテゴリーで特においしい料理、となっており、こちらにも移動や旅行を促す言葉が並んでいますね。
次のページ
第二次世界大戦時には、敵味方両方に重宝されたガイド
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会