利用者数に伸び悩む中国-マドリード間の「鉄道シルクロード」が持つ戦略的意義とは?

2014年に開通した義鳥-マドリード間の「鉄道シルクロード」 photo by ChinaFotoPress/Getty Images

 中国とマドリードを結ぶ鉄道シルクロードは2014年11月に開通したが、人気はいまいちだという。中国の義鳥からマドリードまでの1万3000kmを走行する世界で一番長い鉄道路線だ。これまで義鳥からマドリードまでの片道は39本の貨物列車が到着したが、(貨物を積んで)往復したのは僅かに8本だという。なぜこんなに不人気なのかというと、マドリードから中国向けの貨物が集まらない一番の理由は広報不足からだと見られている。ただ、ドイツで貨物が集まるので往復の便も存在できているわけだ。(参照「El Pais」)。  この貨物列車、中国、カザフスタン、ロシア、ベラルーシ、ポーランド、ドイツ、フランス、スペインの7か国を通過して所要日数は21日。船便の所要日数35日前後に比べ短い。しかし、〈船便の場合が1300ドルと仮定すると、このシルクロード便だと2000ドルはする〉という。  中国からの便は、ヨーロッパに向けて雑貨類などの輸出にこの鉄道が利用されているが、スペインからだと〈ワイナリービバンコ社がこれまで3度この鉄道を利用して中国にワインを輸出した〉くらいだ。同社の場合は、お客が義鳥が所在する地域にいるので尚更メリットがあるとしている。  それ以外に、スペインから15社が利用経験があり、その中で〈エルマノス・ルビオ社はこの輸送手段で赤ワインを2度輸出した〉という。なにしろ走行距離が長いためにいろいろと対策も必要で、〈ロシアの寒冷に備えて保温シートで防禦してのコンテナー輸出をせねばならなかった〉そうだ。同社のこの鉄道を利用しての輸出は中国側のお客からの要望であったという。中国はこの鉄道シルクロードを国家プランとして優先しているということで、この鉄道を利用すると〈国営テレビでの宣伝も無料にしてくれる〉という利点もあったのだとか。
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利用者は少ないが、大きなメリットもある
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