イランと「国交断絶」のサウジアラビア、IMFは2020年同国の財政破綻の可能性を示唆

近代的なジッダの街並み(photo by esithy on Pixbay CC0 Public Domain )

 年が明けて4日に、イランとの「国交断絶」を発表したサウジアラビア。

 イラン=サウジアラビア間での緊張がますます高まりそうな気配だが、それに加えてサウジアラビアは現在深刻な財政赤字にある。

 昨年12月28日には、GDP比15%の財政赤字が日本のメディアでも一斉に報道されたのは記憶に新しいだろう。しかし、同国の財政赤字は2009年頃から発生していたという。そこに来て、政府の歳入の9割を原油の輸出に依存する同国では、最近の原油の価格安で歳入が大幅に減少しているのだ。

 そして、この財政赤字はかなりの深刻度となっている。無論、同国政府は歳出の削減策を実行に移す構えでいるが、それが着実に実行されないと〈2020年には財政破綻の可能性がある〉ということをなんとIMFが予測しているほどなのである。

 サウジアラビアの2015年の歳入はドル換算で1620億ドル(19兆4400億円)、歳出2600億ドル(31兆2000億円)で、財政収支はマイナス980億ドル(11億7600億円)になるという。IMFは公共費の削減と通貨リヤルの切下げの必要性を指摘している。

 財政赤字の主要な要因には原油の価格安、イエメンへの武力介入そしてシリア紛争への武器と資金の供給などがある。米国財務省はサウジアラビアは2015年の上半期に原油安から1500億ドルの歳入減に繋がっていると指摘している。また、イエメンへの武力介入については〈毎月1億7500万ドル(210億円)が空爆費として発生し、5月から既に12億ドルを出費(1440億円)。また地上軍の派遺には5億ドル(600億円)の支出がある〉と『Sputnik』が報じている。そして、その出費を補填する為に〈12億ドル(1440億円)のヨーロッパ債券を今年売却した〉という。

 財政だけでなく、一般市民の犠牲者も少なくない。『HispanTV』が報じた市民団体の調査によれば、イエメン紛争で〈1698人の子ども、1038人の女性を含め、6090人のイエメン人が犠牲者となり、13552人が負傷者となっている〉と報告されているという

 こうした状況を受けて、既に9か月続いているイエメン紛争に市民の間でも不安が募っている。〈当初はイランの支援もあって戦っているフーシ派を打倒して、「イランに教訓を与えるべきだ」と市民もいきり立っていたが、今では紛争解決の出口が見えなくなっており、しかも政府が公表する死者の数にも疑いが生じている〉という。その上、最近もエジプトに支援金として〈300億レアル(9600億円)を提供した〉ことについても、〈「雇用を生むのに必要なお金だ」と低い声で語る市民もいる〉という。〈公式統計によると大卒資格のない若者の半分が失業している〉そうだ。更に、〈公立病院の残業時間は削減、収入が減っている市民は公立の医療施設に診療に行くことから個人クリニックの医師からは患者が減少していることに不満が出ている〉という。(『Internacional en EL PAÍS』紙)。

 しかし、現状を鑑みるに、原油価格の上昇は当面難しい状況にあり、財政支出の削減策しかサウジアラビアが財政破綻から逃れる道はない。

 サウジアラビアが財政破綻すると中東の政情の安定が崩れることになる。サウジアラビアの財政問題は単に同国だけの問題ではない。中東情勢の今後を左右する重要な問題を提起している。しかも、財政問題に端を発してサウジアラビアの王家サウード家においても国家の発展ある存続を維持する為にサルマン国王体制から新しい国王を擁立しようとする動きもある。サウジアラビアの今後は注目に値するだろう。

<文/白石和幸 photo by esithy on Pixbay( CC0 Public Domain)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。


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