検察の描いたシナリオが崩れたのか? オリンパス事件の結末

オリンパス事件

オリンパス事件に関与したとして逮捕・起訴された菊川剛・前会長(写真中央) 写真/産経新聞社

 経済事件のなかには、“誰にも損をさせていない”のに事件化してしまうものもある。その典型例が、闇株新聞氏が追い続けている「オリンパス事件」だ。

 この不正会計事件は月刊誌『FACTA』のスクープに始まり、当時の経営陣によるマイケル・ウッドフォードCEO解任劇もあってクローズアップされることに。結果、オリンパスおよび当時の経営陣は2007年から2011年にかけて、各年度の連結純資産を416億~1178億円も不正に計上した金融商品取引法違反の疑いで起訴され、有罪判決を受けている。

 だが、追放されたウッドフォード氏は12億円もの和解金を手にしたほか、急落したオリンパスの株価はその後、事件発覚前の水準以上に回復した。急落時に手放した投資家を除けば、被害者が存在しない、珍しい経済事件だったのだ。このオリンパス事件は2015年に入って新たな展開を見せた。裁判を経て見えてきた事件のほころびを闇株新聞氏が解き明かす。

「オリンパス事件」は2007年3月期から2011年3月期までの有価証券報告書において、各年度の連結純資産を416億~1178億円も不正に計上した金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで、当時の経営陣や“指南役”とされる外部の人間までが逮捕・起訴された経済事件です。

 すでに2013年に法人としてのオリンパスには7億円の罰金が課され、有報の虚偽記載に関わった当時の社長ら3人に対しては執行猶予付きの有罪判決が確定しています。そのため、「過去の事件」と思われている方も多いでしょうが、実際には現在でも次々と新たな問題が明らかになってきています。

 その1つは、“指南役”の裁判です。2015年7月にはその一人とされる横尾宣政氏ら3人に対して、実刑判決(1人は執行猶予付き)が下されました。オリンパス事件としては初の実刑判決です。しかし、実刑となった理由は、横尾氏らが“オリンパス事件以外”の詐欺罪でも起訴されていたからです。オリンパスに700億円もの架空ののれん代を計上させた国内企業3社の株式を、不当に高い価格で別の国内企業に買い取らせていました。これが詐欺に当たるとみなされたのです。

 2014年末には別の指南役とされた中川昭夫氏が一審で有罪判決を受けましたが、その判決文では「共謀したとは認定できない」と、指南役の立場が明確に否定されています。それどころか金融商品取引法に記載のない「ほう助」で無理やり有罪に持ち込まれました。実は、横尾氏らの判決でも、同様にオリンパスの損失隠しに関しては「ほう助」と言い渡されています。

 結局のところ、オリンパス事件とは“指南役”にそそのかされてオリンパスが手を染めた犯罪行為ではなく、当時の経営陣主導で行われた粉飾決算事件だったことが、裁判で明らかにされたのです。

 あまり、話題になりませんでしたが、2015年10月23日には、指南役と呼ばれながらアメリカに逃げおおせていた佐川肇氏が東京地検特捜部によって在宅起訴されました。この佐川氏は、オリンパスが隠した損失を解消するのに利用した英医療機器メーカー・ジャイラスの買収に際して、自身が代表を務めるアクシーズ・アメリカや関連ファンドを通じて受け皿づくりを担当し、資金等の決済を担った人物です。間違いなく、オリンパス事件の核心を最もよく知る当事者であり、「主犯」といえる存在でした。

 しかし、事件発覚後は日本の捜査機関を無視して、米国の証券取引員会(SEC)とFBIには積極的に協力。その見返りとして、2014年9月に、「将来的に米国で証券業務には従事しないこと」という同国の証券犯罪としては冗談としか思えないほどの軽い処分だけで無罪放免されました。まず間違いなく、オリンパスにとって不利な情報を渡す司法取引に応じたはずです。だからこそ、他の指南役が日本の法廷に立たされている最中にも、佐川氏はオリンパスから得た高額報酬でフロリダの高級リゾート地・ボカラトンで悠々自適の生活を送っていたわけです。

 しかし、その佐川氏が日本で在宅起訴されました。これは、早くオリンパス事件を清算したい、日本の当局の思惑が働いていると感じます。「微罪で済ませるから帰国して捜査に協力しろ」という取引があったのでは……? そうであれば、オリンパス事件はしっかりと真実を明らかにされないまま、完全に闇に葬り去られることになります。


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