「CSR」が単なる「企業の慈善活動」に終わらないためにすべきことは?

万田発酵社長、松浦良紀氏

 2000年代初頭の企業不祥事の後、一気にその認知度を高めた「CSR」という言葉。「企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)」を意味するこの概念は、今では多くの企業に広まり、中にはCSRの専門部署を置く企業や自社のCSR事業に関する報告書を毎年出す企業も出ている。

 その活動の内容も多岐にわたっているが、その一つに国際協力事業などがある。

 例えば、日本郵船やJALは災害時の物資輸送や救援要員の渡航協力の体制を整えたりしているし、森永製菓はチョコレートの売り上げの一部を、途上国の子どもたちを支援に役立てる「1チョコfor1スマイル」などを行っているのは有名な話だ。

 しかし、多くの企業がCSR活動に目を向ける中、社長自らが2か月に1回のペースで現地の支援活動の最前線に定期的に訪れている企業はそう多くはあるまい。

2か月に1回のペースで現地に行く社長


2か月に1度は訪れるという松浦氏

 広島県は因島に本社を置く、健康食品メーカーの万田発酵社長、松浦良紀氏は2年前のプロジェクトスタートから2か月に1回、農業支援を行っているミャンマーに通う日々を続けている。

「実は昨日帰ってきたばかりで(笑)。ミャンマーに行くときはヤンゴンの空港に着くと、すぐにエーヤワディという地区に移動して、そちらで滞在します。向こうでは畑に出るか農家を訪問するかのどちらかをして過ごしていますね」

 社長である松浦氏が定期的に現地を訪れる理由について、大きく2つの理由があるという。

「実務的な話をいうと、私はもともとアグリバイオ事業部の担当役員を兼務しているので、現地で基礎データを取ったり、育成の記録や観測は陣頭指揮を取っているというのが一つあります。あとのもう一つは、私自身がミャンマーに行くのが楽しみだということがあります。というのも、毎回行くたびにいろいろな気付きがあるんです。例えば働き方だったり、生き方だったり、毎回何かを気づくことができる。その意味で私にとっても意義深い時間なんです」

 そもそもミャンマーの農業支援を行うようになったのは、瓢箪から駒のような話だったという。

「弊社の会長と現在のミャンマープロジェクトの執行担当役員が2013年の2月4日にミャンマーを訪れたときに、現地で向こうのナンバー2にあたる副大統領と面談をすることになり、国際電話を通じて会長から副大統領の話と農業支援の話が舞い込んできたんです。突然の話でしたが、私の中では縁のようなものを感じ、電話口で即決しました」

 その話から2か月後、松浦氏はミャンマーに飛んでいたという。

持続し、自立を助けられる支援を


「当時のミャンマーは軍政から解放されて2年ほどしか経過しておらず、国民の大多数は非常に貧しい状況でした。国民の7割が農業に従事する農業国なのに、農業技術の水準が低く、多くの人は国から借金して種籾を買って、稲作をしていました。しかし、種は直蒔きで田んぼにバラバラと撒くだけ。もちろん、水も良いし肥沃な土地なので、そんな感じでも一定量の収穫はあるんですが、そうは言っても限界はあります。結果、毎年赤字になっていたんです。そして、赤字分の補填を自分たちの食い扶持を減らすことで対応していたので、一家の食事は一日2食でも多いほど。この連鎖を断ち切らなければ経済的な成長もないと思いました」

 その状況を目にした松浦氏は、支援の方向性についてイメージを固めたという。

「一時的にお金で支援しても意味が無い。継続した活動にし、自立した経済活動をできるようにするために、まずは食事を充実させるために水稲栽培の収量を増やすことが重要だと思いました。幸い、我々には万田酵素の開発で培った農業技術もあるし、アグリバイオ事業部にはコメ作りのプロが揃っていました。さらに、万田酵素の開発過程で生まれた植物用万田酵素『万田31号』など農業支援するためのツールもありました。これらの状況から考えて『目の前で困っている人がいたら手を差し伸べるべきだ。やれる状況にあるなら私たちがやるべきだ』と強く感じたんです」

 現在は常に現地に駐在する社員のほか、担当役員は毎月、社長の松浦氏も先述したように2か月に1回は現地に赴き、農業指導や勉強会を繰り返している。

「その結果、支援開始から1年で1エーカーあたりの収量が2倍になるなど目覚ましい結果が出ました。元から環境は抜群にいいところなので、これも取り立てて驚く結果ではありませんでした。今ではエーヤワディ以外からも要請が来ており、今年からは協力農家への指導とともにミャンマーの農業・灌漑省とともに国家レベルの農業技術向上に向けての活動も行っています」

自分たちにとっても「価値」を創造する


 そして松浦氏はこの活動を単なる「慈善事業」とは考えていないと強調する。

「我々はこの活動を長期的・持続的に行っていこうと思っています。そのためには、農業技術の向上からさらに進めて、現地でビジネスとして成り立つ仕組みを整える必要がある。将来的にはミャンマーが東南アジアに作物を輸出したりする流通ネットワークを確立させたりしたい。我々のほうもこうした活動を続けることで、万田発酵のことを東南アジアの間で広めることができ、ビジネスとして発展させていければいいと思っています。ミャンマーでの活動はすでに東南アジアの他の国からも注目を集めており、それもきっと可能だと思っています」

 近年ではCSRに変わり、CSVという概念が提唱され始めている。「共通価値の創造(Creating Shared Value)」と訳され、社会的な課題の解決と企業の競争力向上を同時に実現する考え方だとして注目を集めている。

 万田発酵のミャンマープロジェクトは、まさしく現地と同社の間の共通の価値を創造する事業戦略に基づくものなのかもしれない。

<取材・文/HBO取材班 撮影/宮本剛>


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