社長ツイートがネットでブレイク。ご本人に「岩下の新生姜」のプロモーション戦略を聞いた

 一風変わった新生姜関連グッズの販売や、Twitterでの社長の派手な活動が何かと話題となっている岩下食品。今年6月には栃木県に「岩下の新生姜ミュージアム」をオープンさせ、初日には約1000人の来場者が訪れた。食品会社のイメージとはかけ離れたPR施策を次々と打ち出す攻めの姿勢に注目が集まる今、岩下和了社長に施策の狙いを聞いた。

低迷する漬物市場が生んだユニークな施策


 和食と漬物は切っても切れない仲だ。反面、和食以外では食卓に登場する機会はほぼない。国内の漬物市場がピークを迎えたのは1995年~2000年。1998年に5500億円だった漬物全体の売上額は、2013年には3200億円にまで下がっている。

岩下和了社長。右後方に見えるのが、新しい新生姜のパッケージ

「漬物の売り上げが下がっている主な理由は、パンやピザ、サラダなどの現代食の普及です。漬物の位置づけは『嫌いではないけど、食べなくても困らない』に変化している。もうひとつ、健康志向からくる減塩ブームによって漬物がネガティブなイメージとして位置づけられてしまった。健康診断などで食生活を見直す際に、医者や栄養士から控えた方がいいものとして挙げられやすいのが漬物です」(岩下氏)

 今年6月にタキイ種苗が20代~60代の男女357名に行った「漬物に関する調査」によると、漬物を「ほぼ毎日」食べている人は15.7%、「週に数回」食べている人でも35.3%にとどまっている。年代別に見ると、「ほぼ毎日」食べる人は30代だと5.6%、40代は16.9%、50代は22.2%、60代は23.3%と50代、60代に多い傾向にあるという。しかもこの調査には、漬物が“生活習慣”となっているであろう70代以上が含まれていない。

「印象としては、漬物の消費者の約半分が60代以上で、50代が約2割、全体の7割を50代以上が占めています。マーケット全体の売上は下降しているのに競合も多く、“漬物ビジネス”を取り巻く環境は厳しい。しかし幸いなことに、新生姜は岩下食品のオンリーワン商品でした」(岩下氏)

 漬物という枠組みにとらわれたままでは、広い層には届かない。ならば、「岩下の新生姜」を漬物というジャンルから切り離してしまおうという考えに行き着いた。

「新生姜の価値転換をめざして、2012年頃から具体的な取り組みをはじめました。まず、社内の意識を変えようと、『漬物』という言葉を使う時、本当に適切かどうかをよく考えてもらうようアナウンスしました。弊社は業種として分類すれば漬物製造販売業ですが、『岩下の新生姜』を象徴するワードとして『漬物』がいつも最適とは限りませんから」(岩下氏)

 大幅なパッケージデザインの変更にも取り組んだ。従来品は、透明な“袋”から中身の全体が見える、昔ながらの「漬物」らしいタイプのもの。新デザインでは、白と淡いピンク色のパッケージから新生姜がのぞく上品なものへと変わった。

 そして、一連の新生姜のプロモーションに重要な役割を果たしたのがTwitterだ。岩下氏が2010年に開設したアカウントで、当初は個人としてプライベートで利用していたという。ところが、新生姜に関するツイートに触れるうちに「岩下食品の社長」の公式アカウント化していった。目についた新生姜についての投稿を片っ端からリツイート。フォローされたら、フォロー返しをし、時には返信も行なった。岩下氏自ら地道に投稿を続けた結果、現在のフォロワー数は1万6000を超えた。

「Twitterで特に盛り上がったのが、新生姜を使った料理の投稿です。新生姜を天ぷらにしたりピザのトッピングにしたりと、みなさん意外性にあふれたメニューを開発してくれました。2012年に『クックパッド』を舞台に実施した『岩下の新生姜 プラスでいいこと♪毎日の食卓に大活躍レシピ』コンテストとの相乗効果もあったと思います。新生姜の汎用性を再認識するとともに、特に漬物をあまり食べない若い世代の方たちが多かったことで、新たな消費者層への広がりを感じることができました」(岩下氏)

 岩下氏自身も今年6月5日には「初公開です! 岩下の新生姜ペンライト。商品化にOKを出しましたが、ちょっと苦笑い。」と画像つきでツイート。長くてゴツゴツした形に淡いピンク色という見た目が、卑猥なものを連想させるとTwitterやインターネットを中心に話題となった。

「作った張本人(企画開発部の小池貴史氏)がここにいますが、ネットでは『大人のペンライト』という声もあったくらい。普通の会社なら減俸ものですよね(笑)。でも、あのデザインだから拡散された。実は、原料そのままの形状をデザインに起こしたアイテムなんですが、世間の『生姜』との間にあるイメージのズレによって、みなさんによろこんでいただけるグッズになりました」(岩下氏)

 新生姜の原材料となる生姜は台湾在来種の本島姜(ペンタオジャン)という種類で、先代社長の故・岩下邦夫氏が採用したもの。通常の生姜のようにごろっとした無骨なものではなく、スラリとしたフォルムをしている。

「固い土に植わったままの状態だと固くて辛い生姜になってしまう。さまざまな方法を模索した結果、現在では3回にわけて土をかけるという、特殊な栽培方法を採っています。こうするとやわらかく、辛味の少ない生姜になるのです。先代が本島姜を見つけて、さまざまな栽培方法を模索するなど、新生姜の誕生には物語があります。商品化までの『新生姜誕生ストーリー』を伝えたいという思いはありました」(岩下氏)

 新生姜のことをもっと知ってもらいたい。そんな気持ちが形となったのが「岩下の新生姜ミュージアム」だったのだ。

※次回、『話題の「岩下の新生姜ミュージアム」。その成功の秘訣とは? 』に続く

<取材・文/畑菜穂子


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