山手線事故で浮き彫りになったJR東日本の問題点――安全への意識と輸送障害への対応

山手線

今回、大きな事故にならなかったのは幸運だった

 4月12日午前6時過ぎ、JR山手線神田~秋葉原間で架線を支える支柱が倒れているのが見つかり、長時間にわたって山手線と京浜東北線が運転を見合わせるという事故があった。死傷者は出ていないものの、支柱が倒れる1~2分前に現場を山手線が通過しており、さらに約3分後にも通過する予定があったというから、ほんの少しタイミングが悪ければ衝突・脱線を伴う大事故に発展していた可能性もあった。まさに奇跡的に長時間の運休だけで済んだのだ。

 JR東日本によれば10日には支柱の傾きを確認しており、週明け13日に補修工事を行う予定だったという。素早く応急処置をしていれば防げた事故であったことは間違いないし、その意味では“人災”とも言えそうだ。鉄道業界の関係者は言う。

「支柱の傾きを確認したのが10日金曜日。急を要する場合を除いて、鉄道設備の工事は平日の終電後に行われます。今回は急を要しないと判断して週明けの作業に回した。他の作業の予定や業者の手配など難しい点があったことはわかりますが、ハッキリ言って今回の事故は100%JR東日本の落ち度です。万が一震度5規模の地震があったら、支柱は耐えられる状況だったのか。そういうことも想定した上で対応しておくべきでした」

 もし衝突・脱線して死傷者が出る事故になっていたら……。JR東日本がぶちあげている羽田新線構想など吹き飛んでしまうほどの衝撃だったに違いない。

 前出の関係者はさらに続ける。

「JR東日本は昨年2月にも工事用車両と回送電車が衝突して脱線する事故を起こしています。先日も青函トンネル内で列車火災という事故があったばかり。これはJR北海道の事象ですが、鉄道の安全への注目が高まっている中でこうした事態を招いてしまうのは、安全管理に対する意識が希薄になっていると言わざるを得ません」

 JR東日本では、同様の支柱5万か所の緊急点検を実施しているという。これを機会に一層の安全対策が求められることは間違いないだろう。

 さらに、今回の事故にはもうひとつの問題があるという。鉄道専門誌の記者は次のように話す。

「運転再開までに時間がかかりすぎです。午前9時ごろには神田~秋葉原間を経由しない田町~池袋間での折り返し運転を始めましたが、これでも事故発生から3時間も経っている。

もしこれが平日の朝だったら、大変な混乱になっていたと思われます。もう少し早く運転再開することはできなかったのか、振替輸送を受け入れた地下鉄など他路線の体制は充分だったのか。こうした点も含めて検証が必要でしょう」

京都駅

有楽町火災の際も運転再開に時間がかかり遠く離れた京都駅も人でごった返した

 通常、事故などで輸送障害が発生した場合、復旧までに時間を要すると判断されると折り返し設備を持つ駅を利用して一部区間のみ運転再開をするケースが多い。今回の事例もこれに当てはまるし、2014年の正月に有楽町駅付近で火災があった際も、東海道新幹線は品川駅での折り返し運転を行っている。

「とは言え、言葉にすれば簡単ですが、折り返し運転は意外と手間のかかる作業。まず折り返し設備のある駅でなければならないですし、乗務員や車両の手配、新たなダイヤの作成なども必要になり、一筋縄では行きません。それに、日常的に使用していない折り返し設備を使用するならば、あまり短い間隔で酷使するのも避けたい。ですから、事業者側の本音としては、今回のような折り返し運転はできればやりたくないんです」(首都圏の私鉄の関係者)

 前出の有楽町火災における東海道新幹線の例でも、JR東海は当初全線運転再開まで時間はかからないと見込み、限定した折り返し運転にとどめた。その結果影響が拡大してしまったのだが……。

「ですが、それはあくまでも鉄道事業者側の事情で、利用者には関係ありません。2011年の東日本大震災の時もそうですが、特にJR東日本は運転再開まで必要以上に時間をかける傾向がある。安全確保が第一なのは理解できますが、そもそもこうした事故を起こしている以上それは言い訳にしかなりません。輸送障害が発生しても影響を最小限に留めるための対策を普段から十分検討しているのかどうか。はなはだ疑問ですね」(前出の記者)

 安全管理への懸念と輸送障害時の対応。今回の事故を受けてJR東日本に突きつけられた課題は重い。今後は国土交通省の運輸安全委員会の調査も入って原因追求が進められることになると思われるが、JR東日本にはしっかりと検証・対策をしてもらいたいところだ。 <取材・文・撮影/境正雄>


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