破竹の勢いで成長中の韓国BL、その歴史と魅力とは

レジンコミックスで配信中のBL作品

韓国大手漫画配信サイト、「レジンコミックス」で配信中のBL作品一覧

韓国の漫画市場の3分の1以上を占めるBL

 2020年にはタイのBLドラマ「2gether」が世界的に人気を博し、中国の大人気BL作品「魔道祖士」の日本版制作が決定し日本のファンの間でも話題となったばかり。  そして韓国でも、BLは熱い視線を集めている。  1980年代に漫画文化が発足し、2010年代にウェブトゥーン(ウェブ漫画)を中心に拡大の一途を辿っている韓国の漫画市場。 カカオトークが提供するプラットフォーム「ピッコマ」が2020年9月に漫画アプリの売り上げが世界一を獲得するなど快進撃を続け、多くのウェブ漫画サイトやアプリが流通している。 そんな中でBLは3分の1から6割という大きなシェアを占め、その勢力は年々増している。 2019年、ハンギョレ新聞が行ったイエス24、アラジン、教保文庫など大手電子書籍販売サイトへの調査でも、すべてにおいてBLジャンルが急成長していることが明らかになった。 アラジンの場合、漫画と小説を合わせた売り上げが2017年7月の13%から2019年2月には30%に上昇。教保文庫は2015年と2016年のBLジャンルの月平均成長率がそれぞれ213%と216%に上ったという。 韓国の電子書籍大手「RIDI BOOKS」などでもBL専門コーナーが設けられ、数多くの人気作品が並ぶ。

韓国発の作品が海外でも脚光を浴びはじめる

そして、これまでは主に日本のBL漫画が韓国語に翻訳され発売されていたが、韓国発のBL作品も注目を浴びるようになった。  韓国漫画アプリ最大手の「レジンコミックス」は、耳の聞こえないカフェ店長と、犬系バイト青年の恋愛を描く「手話(スファ)」、犬が美青年に変身する「ウルフ・イン・ザ・ハウス」などオリジナルBLコンテンツを日本でも書籍として販売。2020年11月には同サイトでも人気上位のスリラー系BL「キリング・ストーキング」日本語版の最新刊を発売しており、売れ行きは好調であるという。  「キリング・ストーキング」は2019年6月、イタリアで開催されたヨーロッパを代表する漫画フェスティバル「ETNA COMICS 2019」に出典し、原作者のクギ氏のサイン会に欧州から多くのファンが詰めかけた。  そして、中でもひときわ、カリスマ的人気を誇るのが朝鮮時代を舞台にした「夜画帳」(作:ピョンドク)である。  圧巻の画力と構成力、濃厚な性描写が特徴的な同作品は、韓国と米国、そして日本に多くのファンを持つ。2020年4月に公式グッズを発売すると瞬く間に完売するほどの人気ぶりを見せ、日本での単行本発売も待たれる状況だ。
夜画帳

名家・ユン家の長男でありながらも官位に興味がなく、毎日のように男色にふけり、おまけに性格も破綻しているため周りは敵だらけのスンホ。そんなある日、スンホはある春画に心を奪われ、その作者を探し当てるが……。(「夜画帳」第六話より/レジンコミックス)

夜画帳帳2

春画の腕前を見染められ、スンホに召抱えられた少年ナギョム(邦訳版はナミン)。師匠であるイノンへの思慕と、スンホから向けられる狂気じみた執着の間で揺さぶられる。(「夜画帳」第一話より/レジンコミックス)

 作者のピョンドク氏は2020年2月、韓国の最大手ウェブ漫画ポータルサイト「ウェブチューンガイド」が定めるベストBL賞を受賞。ちなみにこのとき、同氏はSNSで受賞盾と賞状を見た父親から「BLとは何だ」と聞かれ言葉に詰まったと記している(BLのことを親に知られたくないのは、万国共通であるが)。
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日本の影響と、韓国独自のBL概念
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