「準備万端」な研修ほど能力開発には役立たないこれだけの理由

 真逆のやり方とは、こうだ。  そもそも研修対象者を決めない。研修は、希望者先着順で参加いただく。従って、申込を受け付けるだけなので、あらためての事前の出欠確認は必要ない。座席は、自由席だ。来た者から好きな席に座っていただく。  従って、誘導も必要ない。名札も作らない。A4用紙を四つ折りにして、三角に折りたたんで名札代わりにし、参加者自身に自分の名前をサインペンで書いていただく。水は、配らない。何種類かの飲み物を、それもできるだけカラフルなパッケージのジュースを取り混ぜて、おいて置き、自由に取っていただく。  資料は配らない。ほとんどが演習なので、資料を見たり、記入したりする暇がそもそもない。携帯の使用や、PCの使用は自由だ。もっとも、二人一組やグループで演習が繰り返されるので、携帯やPCを見ている暇は全くない。  監督者は絶対におかない。どうしても研修を傍聴したいのでれば、どのような職位や役割であろうと、一参加者として参加いただく。会場には、研修参加者以外の人はいない状況をつくるのだ。

能動的な行動をとり続ける研修が効果を上げる

表2

 研修参加者は、はじめのプロセスから、自ら手を上げ参加申し込みをし、好きな席に着き、名札を書き、好きな飲み物をとり、能動的な行動に取り続ける。やらされることは一切ないのだ。  高いモチベーションで演習に参加するので、「携帯はオフ」「PCは閉じろ」「内職禁止」などと小言を言わなくても、携帯やPCを使ったり、内職をしたりする者などいないし、そんな暇もなく演習が続く。研修参加者の集中力を削ぐような監督者はいない。  そして、この方式だと、準備に手間がかからない。たいていは、トレーナー一人で、人数分のポストイットやサインペンやロープレ用三脚を詰め込んだキャリーバックを引きずりながら、研修会場を行脚して、準備し、実施し、片付けをしているのだ。(表2)のとおり、研修運営マニュアルに書かれていた対応事項のほとんどは、不要であったり、トレーナー自身が実施したりできることなのだ。 ⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=113501  研修は、研修参加者の能力開発のためのものだ。それ以外の要素を全てそぎ落とすと、このような形になる。このような研修に参加してみたいと思わないだろうか。 ※「モチベーションを極大化するプログラム」は、山口博著『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)で、セルフトレーニングできます。 【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第19回】 <文/山口博> ※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。 【山口 博(やまぐち・ひろし)】グローバルトレーニングトレーナー。国内外金融機関、IT企業、製造業企業でトレーニング部長、人材開発部長、人事部長を経て、外資系コンサルティング会社ディレクター。分解スキル・反復演習型能力開発プログラムの普及に努める。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日経ビジネスセミナー講師(2016年)。日本ナレッジマネジメント学会会員。日経ビジネスオンライン「エグゼクティブのための10分間トレーニング」、KINZAI Financial Plan「クライアントを引き付けるナビゲーションスキルトレーニング」、ダイヤモンドオンライン「トンデモ人事部が会社を壊す」連載中。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。慶應義塾大学法学部卒業、サンパウロ大学法学部留学。長野県上田市出身
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