イーロン・マスクの「火星移住計画」の全貌が明らかに。2020年代には1人2000万円で火星に!?

火星の資源で推進剤をつくる!

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宇宙船は地球をまわる軌道でタンカーとドッキングし、火星まで行くための必要な推進剤の補給を受ける Image Credit: SpaceX

「火星での推進剤の生産」も、基本的には同じ理由である。火星から地球へ帰ってくるのに必要な推進剤を地球から持っていこうとすると、ロケットも宇宙船も肥大化する。そこで火星で推進剤を生産することで、身軽な状態で火星へ行けるようにしようというアイディアである。  もちろん火星にはガソリン・スタンドはないが、火星の資源を使って推進剤をつくることができる。火星の大気には二酸化炭素があり、そして地表や地下には水があるといわれている。まず水を電気分解して水素と酸素を取り出し、そのうち水素を二酸化炭素と反応させることで水とメタンが得られる(これをサバティエ反応という)。そしてそのメタンと、電気分解で得られた酸素を、火星から帰還するためのロケットの推進剤に使用する。またサバティエ反応のもう一つの生成物である水も電気分解して水素と酸素に分ければ、無駄のない推進剤生成サイクルを成立させることができる。もちろん、あらかじめ推進剤生産のための設備を地球から持ち込む必要はあるものの、一度持ち込めば壊れない限りは使い続けることができる。  このアイディアは実は新しいものではなく、1990年に米国の科学者によって示されている。当時はまだ火星に水があるかどうかはわかっていなかったため、地球から水素を持っていく方法が考えられていたが、それでも実際に有人火星探査を行う際の有力な方法の一つとして検討が続いていた。現在では火星に水があることがほぼ確実となったため、水素をもっていく当初の案よりもさらに楽に実現できる見通しができた。  そして「最適な推進剤の使用」とは、もうおわかりのとおりメタンのことである。これまで打ち上げられてきたロケットの多くは、ケロシン(灯油)や液体水素を燃料に使っていた。しかしケロシンは火星で生成ができないし、液体水素にいたってはコストが高く、液体にするために超低温にしているため扱いも難しい。しかしメタンであればコストも安く、扱いやすく、煤が出ないのでエンジンを再使用しやすく、そして火星で生成できるといった多くの特長がある。 ⇒【画像】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=112026

惑星間輸送システムのためにスペースXが開発中の新型エンジン「ラプター」。複雑ながら高い性能と信頼性が期待できる仕組みを使用している Image Credit: SpaceX

 メタンを燃料に使うロケットは、これまでいくつか研究・開発が行われているが、まだ実用化されたことはない。しかしスペースXはすでに、メタンを使い、そしきわめて高性能なエンジン「ラプター」の開発を始めており、今回の発表の直前に燃焼試験の実施までこぎつけている。
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