「NewsPicks」擁するユーザベース社、IPO決定も残る課題

 もう1つの事業であるNewsPicksは、一風変わった経済ニュースアプリだ。外部の経済記事をユーザ自身が集めて、コメントをつけてピックする。編集部でオリジナルな記事も作っている。普通の雑誌や新聞のようにこちらは月額1500円課金制だ。課金をすると、記事の検索が可能になったり、ユーザベース主催のイベントに優先的に招待されるなどの特典がつく。  同サービスはわずか3年弱で会員数が140万人が突破するなど急成長を遂げている。会員数の1%以上に当たる19000人が有料課金を行っているのも特徴で、月額1500円と高単価な分、かなりの収入が得られている。ニュースアプリ最大手の「Gunosy」は1000万以上DLと1桁多いが、収入は全て広告関連であり、NewsPicksは他サービスと徹底的な差別化に成功していることがわかる。  懸念は、DAU(1日のアクティブユーザー)率の低下だ。 ⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=110258

好調の経済ニュースアプリ「NewsPicks」の弱点

 毎日1度は使うユーザーがサービス開始直後は20%近くいたのが、現在では10%前後と半減している。これは他のニュースアプリと比べてもかなり低い数字と見られる。  実はアプリのダウンロード数自体を増やすのは難しくない。最近では「AbemaTV」のダウンロード数が瞬く間に数百万に達して騒がれたが、あれだけ広告を打ち、テレビでも宣伝していれば誰だってダウンロード自体は無料だからする。Gunosyも調達した資金を全て広告宣伝費にそそぎ込みテレビCMを流し続けて一気にユーザーを増やしたことがあった。肝心なのはアプリが消されずその後も使い続けられるかで、だからDAUは重要なのだ。  有料会員が増えているとはいえこれが低下しているのは気がかりだ。  コンテンツ面では、発足当初はベンチャー関連の記事が多かったが、ここ1年は認知度も上がったためか、大企業の経営者や大物政治家へのインタビューも増えた。これが逆に、NewsPicksが「普通の経済メディア」となって東洋経済やダイヤモンドなど他誌と差別化できなくなる要因にならないか不安である。ただ、リクルートとNetflix関連の特集やホリエモンこと堀江貴文氏を中心に据えたインタビュー企画の量は他の追随を許さず、同誌の特徴となっている。  NewsPicksは’16年初頭には黒字化の予定だったが、残念ながら’16年6月時点でもまだわずかに赤字である。しかしながら、昨年と比べて損失が10分の1になっており、遠からず黒字化し、安定したそれなりの収益をうむことが見込まれる。  ただ、このNewsPicksは、実は昨年ユーザベースから分社化した子会社のニューズピックスが運営している。オフィスも同じで、SPEEDA事業の人材との交流も活発であり、連結対象だから結局業績の開示は同じようにするので何故わざわざ会社を分けたのか疑問だった。
次のページ
なぜ早期上場を目指しているのか?
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会