都知事選で話題の“都議会のドン”は江戸時代から存在していた!?

江戸時代にもあった「利権構造」

 町奉行は、北町奉行、南町奉行からなり、北町奉行所は現在の東京駅八重洲北口、南町奉行所は有楽町マリオン付近に置かれ、人口100万人を抱える世界最大の都市であった江戸の町の行政・司法・警察機能を隔月交代で担当した。奉行の下には与力と同心がおり、彼らが現在の都議会議員、都職員に近い存在だった。  身分は奉行の方がはるかに高いのだが、与力と職務上の方針が異なった場合は、与力の意見が通ることが多かったという。それは数年ごとに交代する奉行に対して、与力が世襲職で実務に精通していたためで、与力にとって奉行は“お飾り”に過ぎず、また奉行といえども、代々に渡る与力の利権構造には手が出せなかった。  江戸時代の官僚化した武家社会について詳しく書かれた「江戸の組織人」(山本博文著・新潮文庫)によると、上司であるはずの奉行は、部下の与力の歓心を買うために、今でいう“お中元”と“お歳暮”を欠かさなかったようで、多忙な時期や火事など特別な出動の場合は“特別手当”としてポケットマネーから弁当代までも出していた。その額は月125両(約2500万円)にも上ったという。お奉行様も気苦労が尽きなかったのだ。  今回の都知事選は、舛添要一前知事の公私混同問題への追及の甘さ、高額なリオ五輪視察計画など、都議会の“なれ合い”体質へ都民の怒りが噴出した結果となったが、果たして小池氏は大ナタを振るうことができるのか。大岡越前のような名奉行は、与力や同心をうまく使いこなすことで実績を残せたが、振る舞いが横柄だったり、利権構造を改革しようとした奉行の中には、与力たちが言うことを聞かず、まったく働かなかったために短期間でクビになった者もいたという。都政改革を掲げる小池氏は、どちらの道をたどるのだろうか。 <文/中野龍 写真/Tomo.Yun > 【中野龍(なかの・りょう)】 1980年東京生まれ。日本大学文理学部史学科(日本近現代史専攻)卒。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経て、フリーランス。
1980年東京生まれ。毎日新聞「キャンパる」学生記者、化学工業日報記者などを経てフリーランス。通信社で俳優インタビューを担当するほか、ウェブメディア、週刊誌等に寄稿。
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