なぜエースコックの即席麺はベトナムで大人気なのか?――圧倒的シェアの謎

日本を上回る勢いの即席麺消費のベトナムで圧倒的シェアを獲得

 さて、ここまで見てきた通り、創業以来、低迷期も持ち前の柔軟な発想による高い商品開発力で成長を続けてきたエースコックですが、最近では約900億円の売上のうち、実は約半分は海外で、その大半をベトナムであげています。  軽くベトナムの市場環境に触れておくと、ベトナムの人口は9000万人、平均年齢も若く、元々「フォー」など麺文化も持っている国なので、即席麺のポテンシャルは高かったのですが、現在では即席麺市場は年間50億食にも達しており、これは世界3位の日本の55億食を近いうちに抜きそうな勢いです。  そのベトナムで、年間30億食と6割にも達する販売実績を持つ、ベトナム最大手の即席麺メーカーこそが、エースコックなのです。エースコックのベトナム進出は、再び業績を伸ばしていた1993年、1995年からはベトナム現地での即席麺の生産・販売を行っているのですが、現在のシェアに至ったきっかけは、2000年に発売された「HaoHao(ハオハオ=好き好きの意味)」でした。

もはや活躍は日本にとどまらない、即席麺開発のパイオニア

 エースコックらしく、現地の好みに合わせてエビをベースに作った酸っぱ辛い味が大ヒット、現在では国内の即席麺のうち3食に1食は「HaoHao」であり、知名度もほぼ100%という国民的人気即席麺にまで成長しています。ベトナムの売上の大半もこちらの商品です。  また、興味深い取り組みとして、2015年には現地で製造した本場のフォーを即席麺化し「Pho・ccori気分(ふぉっこりきぶん)」というブランドで日本での販売を行う、逆輸入戦略も始めています。50年以上に渡って、国内の即席麺メーカーと激しい商品開発競争を繰り広げてきたエースコックが、今度は日本という枠を飛び越えて、どんな新時代の看板商品を送り出していくのか、一カップ麺ファンとして楽しみです。 決算数字の留意事項 基本的に、当期純利益はその期の最終的な損益を、利益剰余金はその期までの累積黒字額or赤字額を示しています。ただし、当期純利益だけでは広告や設備等への投資状況や突発的な損益発生等の個別状況までは把握できないことがあります。また、利益剰余金に関しても、資本金に組み入れることも可能なので、それが少ないorマイナス=良くない状況、とはならないケースもありますので、企業の経営状況の判断基準の一つとしてご利用下さい。 【平野健児(ひらのけんじ)】 1980年京都生まれ、神戸大学文学部日本史科卒。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの『SiteStock』や無料家計簿アプリ『ReceReco』他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業、全国の企業情報(全上場企業3600社、非上場企業25000社以上の業績情報含む)を無料&会員登録不要で提供する、ビジネスマンや就活生向けのカジュアルな企業情報ダッシュボードアプリ『NOKIZAL(ノキザル)』を立ち上げ、運営中。
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